一周年記念

□思い過ごしは恋の始まり
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□思い過ごしは恋の始まり□





阿部チャン





「いた、いたた…」
「腹壊したのか?また腐った牛乳飲んだんだろう」
「いや、そんな筈ないってばよ…だって5日前に買ったばっかだし」
「どうせ値引きシール貼ってあるやつだろ」
「失礼な!貼ってないやつ買ったってばよ。ただ…」
「ただ?」
「一昨日から電気止まってて冷蔵庫が…うっ!」

(電気が止まる?あいつ何やってんだ)

お尻を押さえながらトイレにダッシュする後ろ姿を見送りながら、同僚の生活ぶりに頭をかしげるサスケでした。

「あ"ぁ"ぁ"、なんかまだぐるぐるするってばよ」
「そんなんで忍務出来んのかよ」
「ちょっと無理」
「チッ」

(今日の忍務もサクラと二人でやるのか)

まだ下忍の7班。回ってくるのは雑用に近い忍務内容です。
さっさと終わらせて修行をしたいサスケ的には、度々体調を崩して戦線離脱するナルトは悩みの種でした。




「で、何で電気が止まってんだよ」

今日の忍務は山林の下枝払い。
思った通り時間がかかり、ナルトが昼過ぎから参戦しても夕方まで掛かってしまいました。

(今日こそは容赦しねぇ)

今から修行するのも中途半端になる、そう諦めたサスケは、さっさと帰ろうとしたナルトを自分の前に座らせ、尋問を開始したのでした。




『電気料金払ってなくて』

電気が止まるのにそれ以外の理由はないのに、さも特別な事のように言うナルトに、サスケは頭が痛くなります。

「何で払わないんだよ。少なくとも俺と同じ位の給料貰ってるだろう」
「金がないわけじゃないけど、払いに行く暇がなくてさ」
「引き落としにすればいいだろう」

(というか引き落としだろ普通)

そんな思いが顔に出ていたのでしょう。
ポリポリと耳の裏を掻きながらナルトがポツリとこぼしました。

「俺ってば口座作らせて貰えないから」
「は?」
「保証人がいないとダメなんだってさ」

(なんだそれは)

サスケ自身はちゃんと自分名義の口座を持っていて、生活をしていく上で『身寄りがない』事に特別の不自由を感じた事はありませんでした。

「…怠慢だ」
「は?」
「ナルト、火影様ん所に行くぞ!」
「何でだってばよ?」
「ドベだろうがウスラトンカチだろうが、お前はちゃんと試験に合格した下忍だ。それを不審人物扱いさせて許してるなんて、火影として許されないだろう」
「サスケ…俺の為に怒ってくれるのか?」

(の割りにはなんか言い方に容赦がないってばよ)

そう思いつつ、自分の為にサスケが何かしてくれるという事にキュンとするナルト(←サスケに片想い中)なのでした。

「あと、うちはの屋敷には腐る程部屋があるから、お前うちに来い」
「え?それって同棲」

一気に心拍数が上がったナルトの口から飛び出した不適切な発言は、別な意味でテンションの上がっているサスケに華麗にスルーされました。

「お前みたいなウスラトンカチを保護するでもなく監督するでもなく放置するなんて、里の大人達は孤児をなんだと思ってんだ」

サスケに襟首を掴まれてずんずん歩かれ、ナルトは涙目になっています。

「サスケが怒るのは分かるけど、なんでそれと同棲が関係あるんだ?」
「俺がお前の生活を管理する。これ以上忍務に支障が出るのは困る」
「あ…そう」
「孤児だって他の奴にひけをとらない仕事が出来るんだって大人達に証明してやらないと。これから二人で頑張ろうぜ」
「二人で?俺と?」
「おう!!」

(サスケと同棲…しかもサスケからのお誘い。これは愛か?そうなのか?)

『電気止まって良かった』

これから始まるラブラブ生活への期待にポーッとするナルトは、引きずられて皮が剥けた踵の痛みにも気付かない位の浮かれぶり。
サスケはサスケで、別な意味でこれからの生活に思いを馳せています。

「なんだあいつら」
「仲いいんだな」

道行く人の微笑まじりの視線を浴び、もつれるようにして歩く二人。
程なく始まる二人きりの生活。これが恋に発展するか否かは…

神のみぞ知るって事で。


FIN
 

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