一周年記念
□あのサンドイッチを…
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□あのサンドイッチを…□
トビ魚
きょうは株主総会がある。
オレにしては珍しく、自腹でない飲みもあるのだが、まったく心は浮き立たない…
前の晩から落ち着かなかった。
財布から金を出してくれようとしたサスケ。
カレンダーに飲みのマークが入っているから用意してくれていたんだろう。
「明日はお金かからないんだよ」
そういったオレの言葉に刺はなかっただろうか。
株主総会で信任されなければ最悪無職になる可能性がある…
実際にはそんな事はほとんどないのに、最悪のシナリオを考えるオレはどういう見掛け倒しの小心者だろうか。
だがガイですらそういう事態をふと考えるという…
株主総会とはそういう一日だ。
「カカシ、明日はきっと勝つよ」
酒ばかり飲んでいるオレを見かねたんだろう。
小さいサスケがそう労ってくれた。
オレのあぐらの中に入っていなかった。
ピリピリした雰囲気をサスケに感じさせるほどオレは緊張している…
「おいで」
「テレビが見たいんだよ」
そんなサスケの手を取って、あぐらの中に引き込んだ。
少し強引め。
怯えたサスケが立ち上がろうとするのを腕で押さえた。
こうやって抱かせていてよ。
明日はどういう日だと思っているの…
だけど小心者のオレはそんな事もサスケにいえないんだ。
オレがこれ以上の暴力を振るう気がないのを見て取ると、サスケは落ち着いた様子で、オレのあぐらの中でテレビを見てた。
ふと振り向いてオレの頭に手を伸ばして撫でた。
「カカシ、明日はきっと勝つよ」
…O型で単細胞のオレはそんな一言で癒されてしまうのだ…
ごめんねサスケ。
柔らかい身体を抱きながら、サスケの髪の毛に頬を埋めて悪かったなと思った。
当日の株主総会は結局例年のように何事もなくて。
パーティーの後で会社の女の子が弁当屋が用意したオードブルの残りやサンドイッチを綺麗にパック詰めしてくれた。
それとフルーツ。
更にオレの弁当のサンドイッチ。
…小心者のオレは、忙しさと緊張でじぶんの昼飯も食えなかったのだ…
会社主催の飲みに出る夕方。それらを紙袋に詰め込んで、アパートにいるサスケに持っていった。
「うわぁ、全部食っていいのか?」
サスケはいい子でオレの顔色を見てそういってくれたけど。
明らかにサスケに食べきれない量のサンドイッチ。
オレはいつもサスケに空回りしている気がする…
ごめんなさいサスケ。
うっかり故郷のど田舎村の話をしてサスケに引かれた事もあった。
代車で夜遅くアパートに戻ったけど、あの空気を読まない大量のサンドイッチは無残にゴミ箱に捨てられていると思った。
サスケに申し訳ない気持ちで、おそるおそるゴミ箱の蓋を開けたけど、サンドイッチは捨てられていなかった。
それどころかサンドイッチの空き箱もなかった。
サスケはあのサンドイッチをどうしたんだろう…
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