一周年記念
□ツレがプーになりまして
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□ツレがプーになりまして□
阿部チャン
『リストラされちゃった』
てへっ♪という擬音が聞こえそうな笑顔でカカシが言った。
しかも最近にないくらいねちっこく抱かれ、出すものがなくなる位イカされて、眠りに引きずり込まれる寸前にだ。
『どうして』『これからどうすんだ?』なんて、聞きたい事は山ほどあったはずなのに、瞼は上下がくっついて離す事が出来なくて。
次の朝、けだる過ぎる体と腰を持て余しながら昼近くに起きだしたら、とっくに出勤しているはずのカカシがスウェットのままテレビを見ながら『ご飯食べる?』と声を掛けてきた。
それを見て、リストラ話が夢じゃなかったと認識したのだった。
「サスケ、大学は?サボりはダメだよ」
「それをあんたが言うか?誰がこんなにしたんだよ」
「あ〜、うん」
「今日は午後からだからいいよ」
「そっか。じゃあ一緒にお昼ご飯食べようよ」
「…」
何事もなかったようなカカシの態度と、鈍く襲ってくる腰の痛みに、今さら話を蒸し返す気力が湧かないまま、カカシが煎れてくれたコーヒーを飲んだ。
「あ!」
「何?」
「俺、大学続けて大丈夫なのか?」
「それだけは何とかするよ。あと一年なんだからサスケはしっかり勉強して卒業してよ」
『なんとかなる』じゃなくて『なんとかする』というところに若干の不安を感じつつ、身支度をして家を出た。
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(次の仕事、すぐ見つかるのかな?)
玄関を出た所で振り返って見る。古い日本家屋はカカシの持ち物だから、家賃はかからないのが救いかもしれない。少なくとも家賃滞納で宿無しになる事はないだろう。
(けど、すきま風酷くて光熱費かさむんだよな)
初めてこの家で迎えた冬、俺は盛大に風邪をひいた。
12歳の夏、俺は孤児になった。
その原因になったトラブルに関しては思い出すと未だに吐き気がしてくる。
生き残りである俺の関係者だと思われたくない、とばっちり食らいたくない、そんな理由だったんだろう。親戚の誰もが俺を引き取りたがらなかった中、遠い遠い、ほとんど他人と変わらない親戚だったカカシが俺をこの家に連れて来てくれた。
『なんで俺を引き取ったんだ?』
ここでの生活に慣れた時、一度聞いた事がある。
『独りは寂しいからサスケに側にいて貰いたいの』
そう応えたカカシも天涯孤独の身の上だった。
(リストラって多分俺のせいだよな)
カカシは頭も人当たりもいい。真っ先にリストラされるような無能な奴じゃないはず。
それがクビになったのは俺と暮らしているからだと思う。
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