一周年記念

□God bless you! (番外編)
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□God bless you! (番外編)□





かな





朝日が眩しい東向きの四畳半。
カーテンを引いても強烈な日差しが部屋を明るく照らし、この季節は何時までも寝ていられない。
給料が入ったら遮光カーテンでも買いに行こうか・・・
覚醒しきらない頭でそんな事を考えながら、隣に寝ているサスケを抱き込もうとして右手が空をきる。
横を向くと左腕は腕枕をしていた形のまま投げ出されていた。


味噌汁のよい香りが鼻を擽り、はっきりと目が覚めた。
のそりと起き上がれば襖一枚隔てた台所からトントントン…と小気味よい音が聞こえてくる。

サスケは俺を起こさないで朝食を作ってくれているようだ。
とたんにゲンキンなもので、腹の虫がぐうと鳴る。
もそもそとパジャマがわりのTシャツを脱ぎ捨て襖を開けると、そこはダイニングテーブルを置いているのであまり身動きできない三畳ほどの台所。
サスケがガス台に立ち、フライパンに卵を流し込むじゅわ〜という音がした。

「おはよー」
「おう」

ちらとこっちを一瞥したが、出し巻き卵をくるくると巻くのに余念がない。

テーブルの上には鮭の切り身が銘々の皿に乗り、ホウレンソウのお浸しが添えられている。
鍋敷きを轢いた小なべは茄子の味噌汁が湯気を立てていた。きゅうりとキャベツの浅漬けもある。

このメニューを手際よく作ってしまうサスケに感心してしまう。
サスケっていつの間にこんな料理できるようになったんだろう。
そう思ったのは口にでていたようで、サスケが呆れたようにこっちを見ていた。

「今頃なに言ってんだよ。アンタが毎日やってるのを見てて覚えなかったら嘘だろ」

まったくカカシはぼんやりしてるからな〜とブツブツ言っている。
でもね、目の前で職人さながらの手つきで卵を焼いているサスケと、台所をうろちょろして手伝いとは名ばかりの悪戯をしていた小さなサスケがうまく重ならないんだ。
大きくなったよな…とうっかり父親のような感慨に耽ってしまう。

出来上がった出し巻きを皿に移す手つきさえとても優雅で。
タンクトップからすらりと伸びた腕がしなやかに動くたび、サスケの白い腋の下がちらついてドキッとした。
さらにハーフパンツから覗く形の良い長い脚。
昨夜の行為がよみがえる。
あの腕を押さえつけ、羽のように柔らかな身体を組み敷いたのだ。
もう何度か体を重ねているのに初めてのように震える体にキスを落とし、細い足首を持ち上げゆっくりとサスケの中に自身を埋めていく。すると背中に回された手に力が籠った。

(大丈夫?痛い?)

心配になって声をかけると、ハッハッ…と短い呼吸をしながら切なげに見上げてくる。

(は…ぁ…カカシッ…)


「カカシ?」

最中に呼ばれた声と重なり、ハッとした。こんな爽やかな朝から何を考えているのだ俺は…

「ああ…ごめん、卵、うまそーだな」

頭に浮かんだ情景をごまかすように笑えば、

「飯できたぜ。……アンタは早く服を着ろよ」

ビシッと俺を指さしたサスケは、何故かギョッとした表情をして横を向いた。
そうだ、パジャマ代わりのTシャツを脱いだきり、まだ裸だった。

「ごめんごめん」と四畳半に戻り、箪笥から白いTシャツをひっぱり出し被りながら戻ってくると
炊き立てのご飯と味噌汁がよそわれて、サスケもテーブルについていた。
向い合せて頂きますと手を合わせる。

熱い味噌汁を啜りながらサスケを見ると、やはりタンクトップの胸元が目に入り、ウッと喉が詰まる。
サスケのタンクトップ姿なんて、この10年見飽きるほど見てるというのに、今日はどうしてしまったんだ。
これではご飯も喉を通らない。

「食欲ないのか?」

進まない食事に気づいてサスケが心配そうな顔をする。
違うんだ、お前の腋の下が気になって…とは言えず

「いや、最近こうやって揃ってゆっくり朝食食べる事ってなかったと思ってさ。休日出勤だったり、サスケも部活があったりしてたから」

急いで箸を動かした。

「そういえば、そうだな」

サスケがふわりと優しく笑うものだから、俺の下腹がまたキキュンとした。
静まれ野生。昨日あんなにサスケを抱いておきながら、今また飛びかかるのはあまりにも理性がないってもんだ。
大丈夫、まだ持ちこたえられる。

「サスケ、これからどうする?どこか出掛けようか…ホテルのプール券貰ったから行ってみる?」

そう言うと何故かサスケはぶんぶんと頭をふった。

「プ・・・プールはダメだ」

「え?どうして、今日は猛暑日らしいよ〜〜」

「とにかく今日はダメだ」

「そう?それならどうしようか〜」

何故かその後のサスケの様子がおかしい。真っ赤になって無言でご飯をかきこみ始めた。
あっという間に食べ終わり、食器を重ねシンクに立つのを見て俺も慌てて出し巻き卵を口に入れた。

ふと思い当る事がある。

「もしかして、サスケ。…昨日のアレで…体に痕が残ってるとか思ってる?」

サスケがつるりと食器を滑らせたのがわかった。

「な・・・なんのことだ」

ビクッと体を震わせてこっちを振り返った。
やっぱり気にしてたのか。そうだよな。


「大丈夫だよ。昨日はキスマークなんてつけてないからさ。水着になっても平気だって」

するととシンクの中で食器を落としたのかガチャンと派手な音があがった。
サスケの表情は見えないが、耳を赤くしてブルブルと震えている。

「ね?だから気にしないでプールにでも出かけようよ。夕飯はどこか外で食べてきてもいいしさ」

「ちが・・・アンタ」

「え?」

「俺じゃなくて…アンタに…ついてる」

「俺に?」

昨夜を振り返る。サスケが俺に積極的にしたことなんて何もなかったけれど?
サスケは赤い顔のままガチャガチャと食器を乱暴に洗うと、濡れた手を拭き俺の前に立った。

「わるい…俺も夢中で気が付かなかったんだけど…」

ここ…サスケが俺の肩のあたりをついと撫でる。
触られた場所をTシャツの襟ぐりをグイッと引っ張り見てみると、そこには薄く歯型がついていた。

「それからたぶん背中にも」

Tシャツの裾をまくりあげてみる。体をひねって見た脇の辺りに確かに細い爪痕が走っていた。

俺はそれを確認すると思わず頬が緩んでニヘラとだらしなく笑った。
堪らずサスケの手を引き、膝の上に座らせ抱きしめる。

「な、なんだよいきなり」

「嬉しくて」

「なんで嬉しいんだよ。俺は…知らないうちにアンタの身体に傷つけてたんだぜ」

「それってサスケが感じてくれてたってことでしょ?嬉しくないわけないじゃない!」

「ばかっ…恥ずかしい事言うなっ」

サスケがコツンと俺の胸に顔を埋めてくる。
ああ、これはやばい…。これでは俺の理性が持ちこたえられそうにない…

サスケの顔を取り上を向かせる。
ふくれっつらで睨んでくるが抵抗はなく、唇を寄せればサスケはその長い睫を伏せた。
頭の中で我慢ゲージが吹っ飛ぶ音がする。さよなら俺の理性よ…

俺は深く口づけたまま、その軽い身体を抱き上げ布団が敷きっぱなしの四畳半に運んだのだった。



「サスケ、お願いがあるんだけど」

「なんだ?」

「今日は身体に痕つけてもいい?プール行けなくなるけど…」

「ウスラトンカチ…///」



(おわり)
 

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