一周年記念
□猫缶
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□猫缶□
サクマ
今日もスーパーの袋を抱えたカカシが帰ってきた。
「ただーいま」
「おかえり」
カカシは買い出しに行きたがる。
最初は俺に気を使って自ら買い出しに名乗り出ているのかと思っていたけれど、どうもそうではないらしい。
違和感を覚えたのはカカシに買い出しを何回か任せた時。
料理もカカシが担当しているから流石に悪い気がして、俺が買い出しを変わろうかと提案した時。
そんな時。
買い出しを変わろうかと言うと、慌てたような困ったような変な顔で「ゆっくりしてなさい」と立ち上がり、いってきますも無しに出て行った。
その時に、違和感を覚えた。
もう何度変わると言ってもダメだった。
ちなみについて行くのもダメらしい。
そうしていつもカカシは買い出しに行って楽しそうにスーパーの袋を抱えて帰ってくる。
ついでに言うなら、
スーパーの袋には必ず猫缶が入っていた。
謎だ。
カカシの家で猫なんて見たことがない。
むしろ民家を彷徨く野良猫だって、何故かカカシの家には近寄らない。
うちはではその辺の民家よりも猫を可愛がっていたから、ふと猫が寄り付かないことに気が付いた時は少し寂しく思ったものだ。
にも関わらず、
カカシが抱えて帰ってくるスーパーの袋には猫缶が必ず入っている。
買い出しに行きたがるカカシ。
猫缶を買ってくるカカシ。
ただただ、謎だ。
「今日はトマトクリームパスタにしようね」
考えていると、袋の中身を冷蔵庫に入れ終えたカカシがご機嫌でキッチンから顔を出した。
機嫌が悪いよりはマシだが、料理を始める前のカカシの機嫌の良さといったら、失礼ではあるが若干ウザいくらいだ。
俺は返事もなしに、いつも通りテレビと向かい合っている。
別に見たい番組があるとか面白い番組がやってるとかそんなんじゃなく、ただ、カカシが料理をしている間、何をしたらいいのか解らず暇をもて余しているだけだ。
と、
キッチンから"パリッ"という缶の蓋を開けたような音が聞こえた。
―猫缶?…いや、パスタだと言っていたしソースの缶を開けただけかもしれない。
後少しで答えに辿り着けそうな気がして、俺はキッチンを覗こうかと抜き足差し足でテレビの前から離れた。
キッチンからは死角となる壁の角にピタリと張り付き、今、正に覗こうとした瞬間、パスタが盛られているであろう皿を二つ持ったカカシが俺を見下していた。
「なーにやってんのよ」
「…っつまみ食い…、しようと思って」
苦しい言い訳だが、カカシは特に気にした感じもなく「お腹空いてたんだね、ごめんね」と皿をテーブルに運んだ。
俺もキッチンに居たついでに二人分の水をテーブルへと運んだ。
「お待たせ。さ、食べようか」
「…いただきます…」
カカシも手を合わせ「いただきます」をする。
カカシは箸で、
俺はフォーク。
トマトたっぷりの赤い鮮やかなトマトクリームパスタ。
美味しそうなそのソースとパスタを絡めていく。
クチ、クチ…
決して上品とは言えない音を立てながら、ソースとパスタを絡めていく。
ある程度混ざった所で一口。
「ん、んまい」
「そっか、良かった」
俺の満足気な感想を聞いてからカカシも食べ始める。
無言で食事をしていると、赤いソースの中からツナのようなものが出てきた。
「…カカシ、これ、何だ」
「ただのツナじゃない」
当たり前のように返答するカカシ。
「カカシの方には入ってなくないか?」
「そう?」
惚けた顔で食事を続けるカカシを怪しく思い、更に畳み掛ける。
「お前、毎回買ってくる猫缶をどうしてる」
「ありゃま。バレてたの」
凄く嫌な予感がする。
カカシは一つ息を吐くと
「サスケったら、毎日猫缶食べて美味いっていうんだもん」
可愛くてつい、なんて言うコイツ。
もう…、
色んな感情が体を駆け巡った。
そして最後に残った感情は
"呆れ"だった。
「でも、もう止めて、なんて言わないでね」
「…」
「サスケに猫缶を食べさせるのが、毎日の楽しみなんだから。」
「アホじゃないか、アンタ」
「うんうん、じゃあそれで良いから、これからも食べてね」
秘密がバレたアンタ…
なんて清々しい顔をしてるんだ。
「美味しいんでしょ?」
「…くっ…」
「猫缶入り料理」
「…くぅっ…くっそぉぉおおお!!」
俺の味覚のバカ!!
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犬の匂いがして猫が飼えないカカシはサスケを飼い始めたようです
トビ魚様リクのカカサス同棲ネタで、猫缶を食べさせたいカカシと知らない内に飼われてたサスケです。
こんなんで良かったかしら…
トビ魚様へ捧げます。
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