ナルサス2

□はつ恋
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◇はつ恋◇





いつも仕事ばかりでまったく頼りにならない父ちゃんだがサスケ先生を紹介してくれたのは、父ちゃんの顔があってこそだ。
そこは感謝しているってばさ。
初めて会った時サスケ先生は見たこともないきれいな人だった。オレは見とれてきっと間抜けな顔をしていたんだろうがサスケ先生は気にしなかった。
なぜなら父ちゃんも若い頃は間抜けな顔だったからだ…
サスケ先生はすごく美人だと父ちゃんだけには打ち明けた。
すると父ちゃんは笑って「若い頃はもっと美人だったってばよ?」と古い写真を見せてくれたけどオレには今の先生のほうがきれいに見える。
だって若い頃の先生はオレには関係ないからだ…。オレの知っている今の先生がオレは好きだ。





初めて先生に「ボルトか?」と呼ばれた時オレは空を飛んでいるような気持ちだった。誰に名前を呼ばれてもこんな気持ちにならないのに。
父ちゃんは、洋間のソファで先生に酒をすすめながらオレの師匠になってくれるように先生に頼んだ。
先生は気乗りしない顔をしていたけどきっとこの話を請けてくれる。
洋間を覗き見しながらオレはそう確信していた。なぜなら先生もオレのことが好きだからだ…漠然としたそんな自信があった。
「おまえに似ているな?」と先生は笑っていて胸が熱くなった。
だけど父ちゃんが勝手にオレに似ているだけだ。本当は、父ちゃんがオレに似ていると先生に解って欲しかった。
それほど先生は賢そうだった…ヒマワリがオレに似ているのは年少だから許してやるけど。
もしも師匠を引き受けてくれたらオレはオレ自身で先生に話したいことがいっぱいあった。
だけど具体的に何を話したいのかなぜかその時のオレにはちっとも解らなかった。





もっとオレの話をしてくれると思ったのに父ちゃんはあっさりオレの話題を切り上げてただの飲み会みたいになってしまった。
片腕しかない先生は節制をしてあまり飲まなかったけど、父ちゃんはカパカパ馬鹿みたいに飲んだ。
父ちゃんは火影室にまでウイスキーの瓶を持ち込んでいる。きっと、アル中だ。そんな父ちゃんに似ていないところも先生は立派だった。
酔うと父ちゃんはベタベタと先生に密着してやたら先生の身体を触った。だけど父ちゃんは誰にでもこうなんだ。
大人なオレはまだ冷静に見ていられたけど愛想のよかった父ちゃんの顔がふと間抜けな顔になって先生の顔をじっと見つめていた。
オレは物心ついてから父ちゃんの間抜けな顔を一度も見ていない…
それでオレは気付いたんだ。父ちゃんも先生が好きなんだ。
オレと同じように、きれいな先生の顔に見とれているんだ。
昔の父ちゃんの写真が間抜けなのはずっと先生が好きだったんだ。
オレはなぜか涙が止まらなくてずっとしゃくり上げるのを我慢していたんだけどやがて堪えきれなくなって嗚咽を上げた。
「どうしたんだ?」って先生がドアを開けてもまだオレは泣いていた。
「どうしたんだ、ボルト?」って先生が優しくたずねたらオレはもっと泣きそうになって口がへの字に曲がった。
「サスケのことが好きなんだよ」
いつの間にか、父ちゃんが真面目な顔をして立っていた。ばかやろう。バラしやがって。父ちゃんなんか死んじまえ…





だけどそれから先生はオレの師匠を引き受けてくれた。
アカデミーの冬休みが終わった頃オレと先生は一緒に修行を始めだした。




FIN.
 

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