猫カカサス

□スズメさんよ天まで
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夏になって、サスケの狩りのシーズンになった。
なぜ夏なのかというと狩りの経験に乏しいサスケが、セミの死骸を家に持ち帰る季節なのだ。
猫は動かない物に興味がないと思われがちだけど、死んだセミを律義ににんげんに見せに帰るサスケが好きだったってばよ。
だけどなにしろ死んだセミだから、にんげんに奪われ捨てられてもサスケは執着しなかったけど。





◆スズメさんよ天まで◆





サスケと一緒に午後の歩道を歩いた。
「ナルトは今までどんなものを捕ったの?」
「んー。ヘビかな」





「1m近いヘビでさ。あの時はにんげんがギャーって騒いで受けたな」
サスケが尊敬の眼でオレを見ていて、オレは胸が高鳴った。
オレは、サスケに認められるためだけにこの世に存在している気がする…





ところで歩道の植え込みには、スズメの群れが植え込みに潜ったり乗ったりしてた。
オレもサスケもスズメは大好きだ。
こんな平和な光景はないように思ったぜ。
ところがひょいと飛び出したサスケが偶然スズメを捕まえた。
今まで死んだセミしか捕った事のないサスケが。
前脚でそっとスズメを押さえながら、サスケからは満足と愛しか感じられなかった。
なんならこの、ほわほわやわらかくて熱い体温の生き物と一生遊んでいたいんだ。
だけど野生のスズメは、猫に押さえつけられたショックで傷つけなくても大体死ぬ…
ちいさな身体いっぱいに愛を感じているサスケに可哀相でそれがいえなかった。





植え込みから一斉にスズメがばっと飛び立って、サスケは気を失ったスズメをそっと咥えた。





家に戻ったら、サスケとにんげんとのスズメの取り合いになった。
サスケも取られまいと必死だったけれど、にんげんが多少傷だらけになりながらもスズメを取り上げた。
人差し指で心臓マッサージをすると、息をふき返したスズメの熱い体温がオレにも伝わった。
開け放したままの玄関から、スズメがバタバタと飛び去るのを見て、サスケが残念そうだった。
セミなんかと違って大好きだったんだよな。
友達になりたかったんだよなサスケ。





「サスケ、あのままだとあのスズメは死んだってばよ」
「えっ…」





「スズメが大好きなんだろ。生きてるスズメを追いかけるほうが何倍も楽しいってばよ」
「うん。だけど…」





「あの子をおとうさんにも、見せたかったな」





サスケがスズメが飛び立った青い空を見てちょっと涙ぐんでいて。
オレはそこまでサスケが大好きなスズメが羨ましかった。




FIN.

 

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