ナルサス

□座敷牢/天使
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◇座敷牢◇





その人は抜け忍の兄の責めを負って、座敷牢に幽閉されていた。
小さな屋敷には守衛が立っていて、オレはじぶんの下忍を使ってその人に必要なものを届けさせたりした。
屋敷を通りかかると、その人は会釈してくれるようになった…





家で差し入れを用意していると、リビングのソファに寝転がったナルトが「あんな男が好きなのか?」と聞いてきた。
おまえバカだろう。





「異国じゃ罪人に親切にしすぎた刑ってのもあるんだぜ」
ソファから立ち上がって背中にしなだれかかってきたから重くてしょうがなかった。
叱ってやろうとしたんだけど荒い息を吐いて、耳を舐めてきたからくすぐったくて笑った。





「こら、やめろ」
「オレはサスケが罪に問われるのが心配なの。心配すぎて好きなものを舐めて心を癒してんの」
「こら、こら」
「どうかもっとオレを癒して」





ソファに座らされてズボンの前をはだかれて舐め上げられてしまった。
始めはくすぐったいだけだったのに、脚がガクガク震えてナルトなんかの頭にしがみついてしまった。
そうしないと恥ずかしい声が上がった。
射精してしまうと、ナルトはベロリと唇を舐めて、「癒される」と笑った。
「サスケの赤いほっぺに癒される」と笑った。





あんな苦いものを飲み込んで癒されるというのだから相当な変態に違いない。
こんなにきれいな顔をしているのに、こいつはバカのまま死ぬのだろう。





ナルトにはいえなかったけど、オレはあの人が罪人だとは思っていなかった。
兄のために人生を棒に振った被害者だとすら思った。
だけどそれをいえば、あんなバカでも心配するだろう。





翌朝すやすやとベッドで眠るナルトを残して、あの人への差し入れを持って玄関を出た。
オレの下忍が任務中だったからだ。
屋敷にはめずらしく、守衛が立っていなかった…





赤い格子の中にあの人はいて微笑んだ。
「あなたと一度、ゆっくり話がしたかったんです」
「あなたの兄が、私の兄のような抜け忍だと知っています。あなたが私のように、処分されずによかった…」
「きっと周りの方々が、あなたのために尽力してくださったんですね」





あの人の話を聞いて、オレは心苦しかった。差し入れを脇に置いてずっといいたかった事を喋った…





「どうしてそんな澄んだ眼をしていらっしゃるのですか。オレはイタチが抜け忍になったのをずっと恨んでいた…」
「オレは恥ずかしいです」





朝の日差しの中で、あの人のほつれた髪と笑顔がまぶしかった。
誰にもいえなかった辛さを、この人だけは解ってくれる気がする。
イタチがどんなに非道いやつだったか。オレが、どんなに孤独だったかを話してこの人と一緒に泣きたかった。
それでもおだやかなこの人の顔を見ると、そんな気持ちは消えてゆくのだ…





「あなたが私のように、処分されずによかった。私が笑っていられるとしたら、だからかもしれません」
その人の周りの空気が濃密になって、気がつけば格子からオレは手を握られていた。





「一つだけお願いがあります。一度だけ口づけを交わしてくださいますか?」





ぐいと手を引っ張られたけどその気になれば制止できた。オレがそうしなかっただけだ…
触れた唇は濡れていて、そうだ。ナルトのだったと思う。
そう思ったら、変化を解いたナルトが「失格」と笑っていた。





「誰が見てるか知れねーとこで、罪人にほだされちゃ駄目だってばよ」
「あ…あの人は?」
「きのう処刑されたよ」





「…ひでぇ」
「サスケが悲しむと思って」





あの人は死の間際まで、里と兄を恨んでいた。
だからどうしても、サスケに見せたくなかったんだよ。
「だけどさ。同じ抜け忍の弟のサスケだけは信用していたんだよ。それは信じてくれよな」





「変化して、でたらめを喋ったのか」
「あれはでたらめじゃねぇ」
ナルトは真面目くさっていたけど。





兄弟もいないくせに、オレの気持ちが解るものか。
オレは怒っていたのに。まださっきのナルトの変化にドキドキしていた…




FIN.

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