シュガー

□happy birthday
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二年前の今日、私は彼にひとつの質問をした。
当時恋愛関係にあった――恋人にすら自らのことを明かせない、なにもかも秘密の彼に、私は『なにもかも秘密』だということを知っていて、あるひとつのことを尋ねたのだ。

なぜだろう。――竜崎の誕生日っていつなの――…あの時、私はそう口にした。なぜそんなことを訊いたのか、それは自分でも分からない。

私がそれを口にした時、その場には私と彼しかいなかった。正確には、他にも職場の人間たちが数人いたのだけれど…彼らはみんな少し離れた場所で作業をしていて、私の呟きなんて聞こえそうにない様子だった。その時の私はそんなことは意識などしていなかったけれど、実際彼らには聞こえなかっただろう。

もしかしたら、私は彼の目の前にあったハロウィン模様のお菓子たちに嫉妬したのかも知れない。
とは言っても、いくらなんでもお菓子に嫉妬なんかするはずはなく、私が嫉妬したのならそれはハロウィンという行事、延いては『祝うことが出来る』という形のない形式に対してだ。
それか、もしかしたらあの数日、私には何か無意識に感じるものがあったのかも知れない。例えば予感だとか…第六感と言われるようなそういう不思議な力、それが私の口を動かしたのかも知れない。
…なぜならその五日後、彼は死んでしまったのだから。
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