Crime City

□第2章 リミットオーバー
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       第2章 リミットオーバー

   家を飛び出して2時間後、夕闇はゆらゆらフェリーに乗っていた。
飛行機ですぐにでも助けに行きたいというのが本当のところだ
しかし、残念ながら○○島は空港がなくて止むを得ない。
    フェリーの券を買いに行くと、「あの島に行くなんて。」
「自殺祈願者だよ。」など勝手なコソコソ話が繰り広げられる
だからどうした、守りたいものを守れないクズにはなるなら、死んでやる。
    パーーッ
どうやら、島に着いたようだ。
「で、でかい…。」
俺が最初に目がついたのは塔の大きさだ、東京ドームなんか目じゃないだろう、高さは雲で頂上が見ることができない。

しばらく歩いていくと、関所?みたいな場所にぶつかった。
『クライム•シティに挑戦する者か?』
「そうだけど。」
少し身構えると慌てた様子で
『わたしは、この関所でゲーム参加者に説明をしているものです。』
とりあえず、敵ではないようだ
しかし、両腰にはSIG P250と
S&W M39が掛かっており、武器を持っていない俺が挑んでも確実に無力化か殺すかされるであろう。
『えーと、とりあえず警戒を解いて貰えますか…。』
今は言うことに従おう。
『お好きな武器の種類を二つ選んで下さい。同じ物でも構いませんよ。』
その中にはアサルトライフル、スナイパーライフルやマシンガン等があったが俺はあっさりサプレッサ付きハンドガン2丁にする事にした。
「サプレッサ付きハンドガンにする。」
ニヤニヤ気持ち悪い笑みを浮かべながら銃を手渡してくる。
『それではこれを…。』と、手渡されたハンドガンを確認するとベレッタPx4とH&K USPというかなり強い部類に入るであろうものだった。
両方、多種類の銃弾に対応していて信頼性も比較的高い設計だったはずだ。
「ありがとう。」
感謝の気持ちなど持ち合わせていないが取り敢えず社交辞令?的な感じで口からでまかせを言ってしまった。
ベレッタPx4とH&K USPをそれぞれのホルスターに入れ、すぐに構えれるかの確認等をする。
ジャキンッ
うん、大丈夫だ問題無い。
その後、門番を一瞥すると夕闇は迷うこと無く、重く閉ざされた門の前に立った。
すると門番はちょっと戯けた感じに声を出した。
『開けますよ〜。』
ゴゴゴゴッッ
ゆっくりと大きな門が開かれていく、もう後戻りは不可能だろうな。
門番はハッと思い出したように大きな声で注意をした。
『ただの助言ですが、この関所の門をくぐったその瞬間からそこは戦場ですから、頑張って下さいね。』
そうかい、まあ出始めを狙うってのは雑魚い奴の常套手段だからしゃあなしだな。
ただ、俺はそんなクズには負けねぇからそこんとこ宜しく。
夕闇が重そうな足取りで一歩、踏み出した瞬間に何処からかアサルトライフルの銃口が火を噴いた。
銃声が鳴る0.1秒前に夕闇は自分の脳天目がけて銃弾が飛んでくると直感で感じて、バック転をその場で行った。さっきまで自分の頭があったところに銃弾が貫いていく。足が地面に着地する少し前にPx4とUSPを同時に取り出し、着地と同時に銃口を17mほど離れた相手に構えた。
チッ
相手の舌打ちが聞こえる。
「いきなり、なかなか酷い仕打ちじゃないか。」
『弱者は強者に従う、弱者は他の弱者を狙い殺す。』
『ただ、それだけだ…。』
丸刈りにした髪型、身長は180前後だろうか。獲物はアサルトライフル FAL。
FALは世界四大ライフルと呼ばれるアサルトライフルの内の一つで信頼度はとても高い、AK-47には装弾数や射程距離では負けるものの発射速度や連射性などの面では申し分の無いものとされている。
一発でも、被弾してしまえば勝機は無くなるであろう。
常人ならばの話だが。

人間というか全ての生物に与えられている力の中で死に関係するものは比較的に強力なものが多い。その中でも自身や仲間の生命が危機になると陥る『制限解除(リミットオーバー)』は意識が正常な時としてはおそらく最強の強さを誇るであろう。
族に言われる火事場の馬鹿力と呼ばれるものと同じものだ。

FALを再び構えた男はスコープを覗こうとした刹那、
パリンッ
何かが割れた音がした。
男は何が割れたか、そして、誰が割ったのかをすぐに理解することができた。
目の先にいる若者が…。
驚愕の目を見せた男の眼はすぐに狂気へと変わった。
『ケシテヤル、コロシテヤル、フクシュウヲ…。』
フー、フー、フー
こ、こいつ怒り狂ってやがる…
しかし、人間が生物の頂点に座しているのは知識、理性があってこそだ。
だが、今やつは理性が飛んだただの獣だ。
   勝つことは容易い。
ウガァーーッ
FALの銃口が嵐のように火を吹く
野生の獣がまず狙う生物の弱点は首または頭。
やつは迷わず俺の首、頭を集中砲火するだろう。
しかし、それだけ単純ならば避けるのは不可能ではない。
ズガンッ、ズガンッ、ズガンッ
ズガンッ、ズガンッ、ズガンッ
避けれる。
ズガンッ、ズガンッ
「1、2……9発か。」
やつのFALは見たところ改造した様子はない。
そうなると、やつの弾倉の残り装填数は11発。
全て、撃たせたらマガジンを換えるだろう。
いや、必ず換える。
その時が…。

ズガンッ、ズガンッ、ズガンッ
相変わらず単純に頭ばかりを狙い撃ってくる。
ズガンッ           キンッ
露骨に嫌な音が…。
うっ、後ろにある壁2枚からキレイに弾かれた銃弾は夕闇の左肩付近を貫いた。
「こ、これは…。」
カチッ
『跳弾(スプラッシュ)』、障害物が多い時に用いる技。
ハンドガンで行うと、弾いた時に威力が下がってしまうが、アサルトライフルはそんな物では威力はなくならない。
任意でやったかどうかは分からないが少なくともかなり不利になったことには変わらない。
   だが、それをきっかけに俺の『リミットオーバー』は発動した
いや、してしまった。

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