夏目/友人帳

□秋
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「お〜い、夏目。早くしろっ」



「分かってるよ。ちゃんと急いでるよ」




夏目とにゃんこ先生




本日も晴天なり




今日は近くの里山に栗を拾いに来ていた




今の季節、山は実りの宝庫






昨晩、塔子さんと秋の旬の食べ物について話していたら、先生がテーブルに乗り上げて来た



「わあっ、急に危ないじゃないかっ」




「にゃんっ、にゃふん、にゃにゃん」




皿をガシャンッと鳴らし手足をばたつかせている



塔子さんの前だから喋れないのは分かるとしても…



この動き、みっともないにも程がある、と冷やかに見下ろしていた




「あら、あら、にゃん吉くん、栗が好きなのかしらぁ」



塔子さんはそんな先生にもとても優しい




「栗はね、栗おこわにしたり、栗きんとんにしてもおいしいのよ〜」




ちょうど栗拾いの話題に移った時に割り込んで来たから優しい彼女はニコニコしながらにゃんこ先生に説明してくれている



ほんとにちゃんと分かっているのか定かではないが、既に涎をたらしながら、うんうんと大きな頭を、ひっくり返らないのかと心配になるほどぶんぶんと振っている



そして、居間を出て二人きりになるなり、偉そうに命令してきたんだ



「おいっ、夏目。明日は栗拾いだっっ!!!」







そして、今に至る




塔子さんに栗拾いにちょうどいい所があるからと地図を書いてもらった




地図には帰りに寄って来るといいわよ、と茶屋の場所も書かれていた



こんなににゃんこ先生を甘やかしてもいいものかとも思ったが



普段、用心棒として世話になってもお返しもあまり出来ないし、とここまで考えたが




いや、世話をしているのは寧ろ自分たちの方ではないのかと



藤原夫妻たちとのやり取りを思い出して笑みがこぼれた






「にゃんこ先生、気を付けろよ」




慌てて転げ落ちても知らないぞ、と声を掛けたのに



「ふんっがぁあっ!!!」




だいぶ先を走っていたにゃんこ先生は、俺の言葉を最後まで聞かずに消えてしまったんだ





先生が消えた場所まで来るとそこは下り坂と言うにはちょっと険しい崖のようになっていた





下を覗き込んだが暗くて見えない




本当にこの下にいるんだろうか




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