小説

□繋いだ手 -Side I-
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僕はいつだってタッちゃんの後ばかり追いかけていて、振り向いてもらった事なんてなかったっけなあ。
ぎゅっと握った繋いだ手をタッちゃんが握り返してくれたのは、僕を好きだからじゃなくて、僕がはぐれて迷ってしまわないか心配だったからなんだよね。
でもそれでもよかったんだ。タッちゃんと一緒にいられれば。
それで。

結子先生が殺されて、『まほろば』はなくなってしまった。僕たちはバラバラの施設に引き取られることになって、タッちゃんとは離れ離れになってしまった。
どんな場所でもいい、誰と会えなくなってもよかったのに…タッちゃんとだけはずっと一緒にいたかったのに。ずっと一緒だと思ってたのに。
施設に連れて行かれる車の中で、僕は涙が止まらなかった。タッちゃんは一瞬振り向いてくれたけど、何を思ってたのかな…。
あの時のタッちゃんの顔は、今でも忘れない。

ずっと会いたかった。タッちゃんの事を考えなかった日なんてなかったんだよ。
だから、結子先生のお墓参りで偶然再会できたときは、本当に嬉しかった。夢かと思ったよ。
いきなり追いかけられたし、石なんかもぶつけられて怖くて泣いちゃったけど、タッちゃんの顔を見たらまた泣けてきちゃって。びっくりしたよね。ごめんね。なんか僕、泣いてばっかりだね。

その後もタッちゃんは学校にまで会いに来てくれたね。やっぱり、うっとうしいって言われちゃったけど…。
傷は時間が経てば治るって言った僕を、タッちゃんは否定したよね。…うん、そうだよね。僕だって、本当はそんなこと思ってないんだよ…。
タッちゃん…僕、あの約束…まだ覚えてるよ…?

ネックレスがなくなった後のことはよく覚えていないけど、気づいたらネックレスは僕の手の中にあって、タッちゃんが傍にいてくれたね。
もしかしてタッちゃんがなんとかしてくれたのかな?タッちゃんは、何も言わなかったけれど。
なぜだかわからないけれど、結子先生もタッちゃんも、僕のところに戻って来てくれた。
嬉しいよ。嬉しい。すっごく嬉しい。いつまでも傍にいてね。大好きだよ。タッちゃん。大好きだよ。

「合格だ」
そう言って僕の手を握ったタッちゃんの手は、あの頃と同じように温かかった。

もう放さないでね。タッちゃん。大好き。

-END-
 

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