小説

□MEETING
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携帯電話が鳴る。
タッちゃん専用の、トバシの携帯電話。
電話ではなくメールだった。内容は呼び出し。日時は明日夜、場所は都内某ホテル。
(やっぱり若頭ともなると、待ち合わせも高級ホテルなのか…。)
僕はため息をついた。まあ、こういう場合は大体タッちゃんが勝手に会計を済ませてしまうから、僕にダメージはないのだけれど。
明日か、多分大丈夫だな。大きな仕事が片付いたばかりだから、残業はないはず。
傍受を考えてカップルの待ち合わせメールを装っている文面が少し嬉しいのは、タッちゃんには内緒だ。返信の最後に「大好きだよ」と打ちかけて、僕は恥ずかしくてやめた。

次の日の夜。
僕は待ち合わせのホテルに向かう。誰に見られてるかわからないから、部屋まで行動は別々。部屋に入る時間も、かなりずらす。タッちゃんは2時間程前に着いているはずだ。
相変わらず、いくら調べても金時計の男の情報は出てこない。タッちゃんも似たようなものだと言っていたけど、今回呼び出しがあったってことは、何か進展があったのかな…。
僕は部屋のドアをノックした。
ガチャ…
ドアが開く。
「……!!」
僕は言葉を失った。
そこにいたのは、なんとバスローブ姿のタッちゃんだったのだ。暑いのか、胸元が大きく開けている。僕は目のやり場に困った。
「入れよ」
僕の気持ちを知ってか知らずか、さらっと言い放って部屋の奥へと入っていくタッちゃん。
ちょっと…バスローブ、似合いすぎでしょタッちゃん…。セクシーすぎるよ。
「悪ぃけど、オレ先にシャワー浴びたから。お前も行ってくれば」
タッちゃんはベッドに腰掛けてタバコに火を点けた。
うわ、カッコイイ…じゃなくて!
僕は少し焦る。
「いや…そんなことより情報交換は?…いや、僕は特に進展はないんだけど…」
「あ?オレだってねえよ。今日はミーティング」
「え…じゃあ電話でもよかったんじゃない?わざわざ部屋取ってまで…」
「いいからシャワー浴びて来い。待ってっから」
「いや…あの…」
「別にオレはそのままでもいいけど」
「…???」

僕は訳がわからなかった。用も無いのに、どうして呼び出されたんだろう。
とりあえず、言われるままにシャワーを浴びることにした。
(まあ…理由はどうあれ、タッちゃんに会えるのは嬉しいけどさ…。)
脱衣所にバスローブが置いてあったけど、さすがに僕にこれを着る勇気はない…。待たせるのも申し訳ないなと思ったので、バスタオルを腰に巻いて、服は着ずに持って部屋へ出た。
タッちゃんはベッドにいた。上半身を起こしてタバコを吸っている。…絵になるなぁ。
タッちゃんが僕に気がついた。
ニヤッと笑うタッちゃん。
「…何だよそのカッコ、誘ってんのか」
「ばっ……な、何言ってんの!?
僕はただ、モタモタしてたら悪いなと思って…」
「ま、確かにモタモタ服脱ぐのが嫌な気持ちもわかる」
「は?何言って…」
次の瞬間。
僕は、ベッドに引きずり込まれた。
「今日はお前に会いたくて呼び出したんだよ、イクオ。いい加減わかれこの鈍感」
僕は、自分が耳まで赤面するのを自覚した。

-END-
 

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