短編

□小さなプロポーズ
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?「やぁ、こんにちは。緑川君」

緑「は…?なにいってんの…?」

いきなり、赤髪の男……いや、基山ヒロトが変な事を言ってきた。

吉「いや、初めてましてかな?…えっと、俺は吉良ヒロトだよ。」

緑「えっ……吉良さんは…死んだんじゃ……?しかも触れる……」

何故、死んだ筈の吉良ヒロトさんがいきているのか。
そして、ヒロトとかなり似ている。ていうか同一人物だろ。…年齢はざっと見た目20代前後ってところかな?
よく見れば、髪の毛が跳ねてない……

吉「……ヒロトが君のことをと気に入ってるらしいから、少し会って見たくなってね。」

ぎゅっ、と俺の身体を抱き締める。

緑「うわっ?!!」

吉「やっぱり、小さい頃は可愛いね。」

緑「は、離して下さいっ!!」

吉「ヒロトがいるから気にしてるの?」

ヒロトと容姿が同じだからドキドキしてしょうがない。……大人になったヒロトを見ているみたいだ…!!

緑「わ、分かってるんなら離して下さいよっ……!!」

逃げようと抵抗をする。

吉「…大人しくしないと襲うよ?」

その一言で俺の動きが、いとも簡単に止まってしまった

緑「……………。」

吉「君…随分とヒロトから可愛いがられているみたいだね。」

緑「なっ!!」

“可愛がられてる”…コイツ意味解りきった上で言ってやがるな………!

吉「まぁ、こんだけ可愛いんだからわからなくもないけど。」

ふ、と俺の耳元に息を吹き掛ける。

緑「ひゃ……!!」

不覚にも声が出てしまった。
慌てて口を手で塞ぐ。

吉「へぇ…耳、弱いんだ。」

緑「うっ、五月蝿いっ!!」

揉めあってる内(俺の一方的なものだが…)もう一人のヒロトが現れる。

基「…来るのはいいけど…俺の緑川に何してるの…?義兄さん?」

緑「ヒロトっ!!」

吉「あ、久しぶりだね。…ちょっと遊んでみたくて。」

基「できれば離してくれないかな?」

段々と険悪なムードが漂っていく。特にヒロトからは黒いオーラが見えてきて、吉良さんを警戒しているようにも見えた。

吉「ふふ、随分とこの子のことを気に入ってるみたいじゃないか?…ヒロト?」

基「…関係ないだろ……。」

どこかからかうような調子でヒロトに喋る吉良さんが癪に障ったらしく、今までにないくらい機嫌が悪く、かなり苛々としているようだった。
そんな様子のヒロトに対し、わざとらしく吉良さんは肩を竦める。

吉「そんなに怖い顔をしないでほしいな。…別にこの子を盗ろうとなんて思ってる訳じゃないよ?」

発言後に吉良さんはさっきまで、俺の身体をがっちりと捕まえていた腕をパッ、と離す。それと同時に俺はヒロトの元へ駆け寄って行く。

基「緑川…大丈夫?」

ヒロトはすぐに、俺をいつもより強く抱きしめてくれる。

緑「うん。平気だよ!」

ヒロトに向かって笑顔を向ける。
…今はハッキリ言って関係ないが、あの、機嫌が悪いヒロトに対しての対応がやはり大人で、少し感心した。
するとヒロトはホッとし、安堵の表情をうかべたのがわかった。
ヒロトは眉を少し潜めながら苦笑いを浮かべていた。

基「よかった………お前が誰かに触られるって思うと苛々してしょうがないよ。」

緑「それって…嫉妬してる…??」

基「俺だって嫉妬ぐらいするよ。」

ああ、ヒロトは俺に対して嫉妬してしてくれていたんだ。そう考えると嬉しくて、嬉しくてたまらなかった。
ヒロトに思いっ切り抱き着きたくなった。

緑「…ヒロト!大好きだよ!!」

基「…緑川が可愛い過ぎて鼻血出そう。」

緑「バーカ………」

そんな中吉良さんはその場に立ちあがる。

吉「…じゃあ俺はそろそろ帰ろうかな。」

緑「え?」

吉「緑川君、これからもヒロトをよろしくね?」

俺はそんな吉良さんに向かってにっこりと笑って見せる。

緑「はいっ!!」

吉「…じゃあ、またいつかね。」

吉良さんはにこりと微笑みながら、姿を一瞬にして消して行った。
ヒロトもなんだか嬉しそうにしていた。
吉良さんが消えた所をみていると、ヒロトが手をそっと絡ませてきた。

基「…これからもずっと一緒に居ようね。」

緑「うん…。ずっと、ずっとだ…。」

手を通して伝わってくるヒロトの体温が心地よくて、静かに目を閉じる。




ああ、なんて俺は幸せ者なんだろう…

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