短編

□十年後基緑
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今日一日の溜息と共に音を立てながらソファーへ沈む。…今日もまた忙しい日であった。

俺達はあの運命の日から10年経った
エイリア学園のあの一件が終わってからはFFIの代表選手と選ばれた。俺は結局世界大会まで行けなくなってしまい、そしてヒロトとも遠距離恋愛という形になってしまった。
あの時はヒロトと一緒に居られるのが当たり前だと思っていたっけ。
…子供の時が懐かしい。
苦しい日もあったけどヒロトが支えてくれてたおかげで乗り越えられたんだ。
思い返せば笑ってしまうような恥ずかしい事ばかりだ。どれだけ一緒に居たんだろうか…ああ、全部最近の事のように感じる。一日、一日があっという間だったな……

今はそうなれないけど……

「ヒロト……会いたいよ」


ヒロトはお父さんの後継ぎとして吉良の名を継いで有名な社長として働いている。そして俺はその社長の秘書である。
本当はお日様園の保父さんにでもなって少しは瞳子さんたちの負担を減らそうと考えていたが、ヒロトに自分の秘書になってくれないかと頼まれたのでしかたないなと想いつつ承諾をした。
…だけど今はこの選択は正しいと思っている。現に俺とヒロトは関係は10年前から変わらない。ヒロトが社長になった分仕事の都合上離れることが多くなってしまうから。
今回はヒロトだけでしかも遠出だった。…一応俺は自分の仕事をやっていたが。
もう、二週間は会っていない。いつ会えるかわからない日々が続いてた。当たり前だと思ってたのが当たり前じゃなくなるのは本当に辛かった。

「いつになったら帰ってくるんだろ…」

二度目の溜息。

「…帰ってきたよ?」
「んー…おかえり…………ってええ?!!」

お馴染みの声がして思いっ切りさけんでしまった。…ヒロトだ。

「俺が帰って来たことに緑川気付いてなかったね。」
「うぅ………ごめん…」
「別に怒ってる訳じゃないよ?」
「そ、そう…………」
「…緑川?」

どうしよう…久しぶりすぎて顔もまともに見れないし言葉も見つからない!
あぁもう一体どうすればいいんだよ…!!
そんな感じであわてふためいてるとヒロトから髪で遊ぶ様に頭を撫でられる。

「…ただいま緑川」

ヒロトから発せられたただいまの一言が俺の気持ちを楽にさせてくれた。返事は一言。

「おかえりヒロト…」

ヒロトはそのまま俺の腰に手やって優しく抱きしめてくれた。俺はそれに素直に応え、自身もヒロトの背中へと腕をまわす。…そんな行動があったかくて気持ちが良かった。

しばらく俺達は抱きしめあってた。



              --END--



「そういえばヒロトお腹空いてない?もし空いてるんならなんか作ろうか?」

「あー…うんそうだね。凄くお腹が空いてるかな」

するとヒロトはソファーの上へゆっくりと俺を押し倒してきた。

「もう俺はペコペコだよ。…久しぶりだからじっくり堪能させてもらうね…リュウジ………。」

「…あんまがっつくなよ?」

二人で顔を合わせて笑う。


…最高のディナータイムはこれからだ

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