短編

□スターライン
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カタリ、と机にペンを置きながら、腕を組んで疲れきった身体を後ろへと伸ばす

「ようやく終わったー…っ」


今は深夜の2時頃だ。
普通は誰も起きてないような時間だ。
…実は今日、悪友である晴也と風介が赤点をとり居残りに。…教えろ教えろと煩かったから仕方なく勉強を教えてあげて一緒に放課後手伝ってあげてたのだが、俺が真面目に(ここ重要)教えてる中、いきなり二人が喧嘩をし始めて対には乱闘に。晴也のアトミックフレアが風介に当たらずそのまま窓を突き抜けた。あとは察しのとおり。
何もしていない俺までお叱りをうけた。しかも反省文を書かされる事になった。理不尽すぎる。そう思いつつ、こうやって普段遅くまで起きない俺は頑張って反省文を終わらせた。

「ふー…早く寝ないとな…」

いそいそとベッドに向かいながら、
明日は晴也の顔面に流星ブレードぶちまけてやる。…とか考えているときなりドアが静かに開いた。緑川だ。
パジャマ姿の緑川は目をこすり、泣いていたようにも見えた。なんで緑川が来たのかはわからないけど、まずは事情を聞くのが大切だ。

「……緑川…どうしたんだい?」
「…ヒロト…………っ」

緑川はそのまま俺に飛びついてきた。その勢いに押され、すぐ傍にあったベッドへと沈む。

「っ………み、緑川?」

緑川は黙っており、俺の服を強く握りしめていた。暫くすると小さく掠れた声で口を開いた。

「…昔の、夢をみた、んだ……お父さんもお母さんもいなくなっちゃって…一人ぼっちで、寂しくて、怖くて……しらない人にいっぱい怒られて、痛かった………なんで、なんで…誰も助けてくれないんだろうって…苦しかった……」

自分の心に重く、苦しい気持ちがふりかかってきた。緑川も俺も孤児という存在で色々な辛い経験をしてきた。俺も最近は無くなったけど昔は夢によくでてきた。
前に姉さんに聞いた話だが…
緑川の家族は近所でも仲が良く、明るいと大変有名だったらしい。だけどある日父母ともに不慮の事故で亡くした。一人となった幼い緑川は親戚の人に引き取られたらしい。だけどそこで受けられたのは酷い暴力。…虐待をされたらしい。
心身共に傷付きながらも笑顔を忘れなかった緑川が、おひさま園に来たときは姉さんも驚いたそうだ。笑顔でいることは両親との繋がりでもあったのだろう。
だけど、いきなり昔の辛い事を思いだしたら苦しくなってしまったのではないか。

途端に緑川は声を押し殺しながらボロボロと涙を流す。まるで捨てられた子猫のようだった。…愛おしい、そっと抱きしめて、この手で守ってあげたいという衝動におそわれた。
身体を起こして、上にいた緑川をぎゅっと優しく、壊れ物を扱う様に抱きしめた

「うん…怖かったねでも大丈夫、俺がずっとずっと傍にいるから、緑川を守ってあげる。一人ぼっちになんか絶対しない。…緑川、俺がお前を愛すから……」

綺麗な萌黄色のふわふわとした頭をそっと撫でる。

「…ヒロト…おれの事、離さないでね…」
「あぁ…俺はお前の事を絶対に離さない、絶対に」
「ありがと…ひろ……と……」

緑川は静かに寝息をたてはじめた。
長い睫には先程泣いてたせいかうっすらと水滴がついていた。傷をつけないように指の腹でスッと取ってあげれば、なんとも言えない笑顔で嬉しそうに微笑んだ。これを形容するならまさに天使の微笑みだ。周りをほっこりとさせそうなその笑顔に俺もついつい頬が緩んでしまった。

「ふふっ…可愛いなぁ……ほんと…」

緑川をそっと俺のベッドの上に寝かせながら、俺もその隣へ静かに寝る。
ちょうど緑川の顔がよく見える。まだあどけなさが残る、中学生には見えない愛らしい幼い顔立ちだ。頬を突っつけば少し唸り、くすぐったそうに顔を歪ませる。

緑川の笑顔は俺を何時だって幸せな気持ちにしてくれた。そんな笑顔を守らなきゃいけない、俺が、この手で守るんだ、
誰にもやらせない。緑川の笑顔を守るのは俺だけの特権。ずっとずっとお前傍にいる
絶対に離さないよ。



この大切な笑顔を守るため
俺は君の輝く星となろう


君の傍でずっと支えていく希望の星に
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