ここと異世界と繋ぐモノ。

□炎の谷の来訪者
1ページ/5ページ

 同時刻・炎熱櫓

「――はあ!!」

 パッコーンッ!!!

「吹っ飛んだ……ホームラン?」

 ナイトメア木魚を蹴っ飛ばした。
 そしたら谷の向こうまで吹っ飛んだ。
 ……やり過ぎた?

「アイナ……まだかな」

 シルフィーがいないからつまらない。
 今日はクエストの依頼で、私たちは別行動だから。

「ムスー……」

 シルフィーはドラッケン学園。私はタカチホ義塾のお手伝い。
 アユミの妹のアイナが来る。……なのに、まだ来ない。約束の時間、大幅に過ぎてるのに。

「……つまんない」

 時々来るモンスターと戦いながら待ってる。
 でも、弱いからつまんない。

「…………」

 まだかな。まだかな。
 ……早くシルフィーに会いたいのに。

「…………! いた! オーイ!!」

 ……誰? 声が聞こえる。

「はあ、はあ……さ、捜したぞ……! よかった……」

 後ろから声をかけられた。
 ……誰か捜してる?
 クルッ、と振り返ってみた。

「……あれ……? “ソフィ”……?」

「……?」

 ……ソフィって誰?

「お兄さん……誰?」

「えっ……? あの……」

 目の前の人は困った表情をしてる。
 赤みのある茶色の髪。透き通った青い右目に綺麗な紫色の左目。
 服は……学校の制服じゃない。白くて綺麗な服。

「……誰?」

「お、俺はアスベル。……アスベル・ラントって言うんだ」

「……アスベル」

 ……変わった名前。
 冒険者、かな?

「……ねぇ。アスベルは何してるの? ソフィって人を捜してるの?」

「あ、ああ……うん。そう、なんだ……。君とよく似ている女の子なんだけど……」

 アスベルって人は心配そうな顔をしてる。
 ……ソフィって子が、心配だから?

「……はぐれちゃった?」

「ああ……気がついたら、いつの間にか……見たことない地形や環境だし、心配で……」

「……?」

 見たことない環境……?
 ……お兄さん、この環境、見たことないのかな?

「ソフィ……大丈夫かな……」

「…………」

 泣きそうな顔にも見える。
 心配してるから。不安だから。

「……ねぇ」

「? な、なんだ?」

「一緒に、捜す」

「……え?」

 私がそう言えば目を丸くした。
 ……いきなり過ぎて、わからない?

「私も、捜す」

「……君も?」

「うん。お兄さん、この辺りの環境、わからないんでしょ?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ