短い夢

□ただそばに
1ページ/1ページ

「有香、おはよっ!」

『ん、おはよ、香奈』


学校へ向かう途中、聞こえてくる、いつもの声。

私の親友の加奈。

そして、もう一人・・・


「よっ!おはよ、加奈、有香!!」


雄哉。

幼馴染で、私の、好きな人。


「おはよ、雄哉!」

『おはよー、今日も朝から元気だなぁ・・・なんか馬鹿みたい。てか馬鹿。』

「うるさい、有香!」


幼馴染としてそばにいた私は、なかなか素直になれなかった。

裕也はもてるからいろんな人がねらってる。

それに、この関係が崩れるのがいやだった私は、

告白もせず、いつもどうりにすごしていた。

ただ3人、一緒に入れればいいかなって思ってたんだ。

裕也のそばにいられれば、それでよかったんだ。







『好きな人ができたぁ!?』


放課後、雄哉に相談があると言われ、どうしたんだろうと思ったときに

聞こえてきたのが、この言葉だった。

・・・好きな人ができた?雄哉に?

裕也は恥ずかしそうに言葉を続けていく。


「俺、加奈が好きなんだ。」


・・・あぁ、やっぱり。

好きな人の名前を聞いて、真っ先に思ったのがそれだった。

裕也の加奈を見る目と私を見る目は、ぜんぜん違っていた。

私を見る目は、ほかの友達を見る目と一緒。

でも、加奈を見る目は、恥ずかしそうな、照れたような、そんな目だった。


「でな、有香と加奈は親友だろう?だから、協力して欲しいんだ。」


裕也は、私の思いなんか知らずに、両手を合わせて頼んでいる。

・・・でも、私の思いを知らないのは当たり前。

私は、私を見てもらおうとしなかったから。

ただ、そばにいるだけだったから。

だから・・・


「有香?・・・だめか?」

『・・・いいよ、協力してあげる。』


裕也の願いを無視することはできない。






次の日から、裕也のアピールが始まった。

もともと裕也はいいやつだし、加奈が好きになるのに時間はかからなかった。

そして、加奈からの相談も受けるようになった。


2人からの相談を受けるうになってから数日後、私は雄哉に呼ばれた。


「俺、加奈に告白する。」


あぁ、ついにこの日が来たか。


『そっか。・・・裕也ならいけるよ!!リラックスして頑張れ!』

「おう!いろいろとありがとな!!」


そう言って、裕也は行ってしまった。

行かないで、と言いそうになった。

そばにいて、と言いそうになった。

・・・私も裕也が好きだよ、と、いいそうになった。

でも、そばにいられればいい、といっていたのは私。

何もしなかったのも、私。


『・・・うっ・・ひっく、うぅ・・・ゆ、や・・・雄哉・・・っ』


この思いは封印するから。

ただの幼馴染になるから。

だから・・・



ただそばに

いさせてください。

(次の日、手をつないで一緒に来た二人は)

(すごく幸せそうで)

(ズキン、と痛む胸の痛みを隠して)

(おはよ、といつものように挨拶した)

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ