暗闇の中で…(上)
□【車いすの少女】
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その瞬間看護婦さんは俺から目線を反らし、一瞬曇った表情になった…
いや、そう見えたと言うのが正しいかも知れなかった…
俺は気が付かないふりをし、話を進めてみた…
「不味い事なのかい? なら、口止め料もらわなきゃ…」
「もう、意地悪しないで下さい。」
「ハハハ…わかったよ。もう少し詳しく聞きたいけど…」
「ん…ごめんなさい。まだ仕事があるので今度にしましょうか?」
看護婦さんは車椅子の子の話を止め、病室や病棟の説明をし始めた。
話が一段落し、俺に挨拶をすると看護婦さんは病室の他の患者に挨拶をしながら部屋を後にした。
一人になった俺は、もう一度中庭に目を移した…
あの車椅子の女の子は此処からでも分かるほど精気が無く、ただ椅子に乗せられている感じで、どことなく人形の様にも感じる。
俺は、少女の事が不思議と気になり中庭に出てみることにした。
エレベーターを使い、少し迷いながらも中庭に着くと、すぐに車椅子の少女が目に飛込んできた…