暗闇の中で…(上)
□【車いすの少女】
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その少女は、体は細く痩せており、真っ黒な長い髪が印象的だった…
目は虚ろで焦点が合わず。口元は半開きで正直逝っている感じすらした…
真っ白なパジャマと色白の肌で、病室から見たときに感じた印象と同じで、生きている気がしなかった…
年齢は15、6って感じか…いや、もっと若い気もした…
俺は、何も知らないフリをして挨拶してみた…
「こんにちは…いい天気ですね。」
「はい、こんにちは。本当ですね。」
少女の車椅子を押している看護婦さんが笑顔で答える。
さっきの看護婦もそうだったが、ちょっと俺好みで、改めてこの病院の看護婦の質の高さに舌をまいた。
色々少女について聞いてはみたのだが、たいした事も聞けなかった。
何か、秘密にしている様にも思え、それが気になった…
結局、当たり障りのない会話で終了し、最後に病室に戻るそうで、少女を見送る素振りをし、中腰になり少女に語りかけてみた…
「早く元気になると良いね…おじさんも応援してあげるよ…」
看護婦は笑顔で俺を見ていた…その視線を感じ一瞬少女から目線を外しかけた時に…
「みつけた………」
小さな声が聞こえた気がした…
ふと、目線を少女に戻すと唇が微かに動いている気がした…
看護婦は声も、少女の唇にも気がつかなかったようだった…
俺も気のせいだと思い、たいして気に留めなかった…
そして再び、少女に会うまで、この事を忘れてしまっていた。