暗闇の中で…(上)

□【声に導かれて】
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薄暗いトイレは何か不気味な雰囲気がし、改めて病院の冷たさ、不気味さを感じている気がした…
 
用を済ませ、トイレ出ようとすると微かに人のうめき声が聞こえた…
 
『うぅ〜〜〜〜ぅ………………』
 
「なんだ?…どっかの病室で爺さんでも唸っているのか…気味悪いな、夜の病院は…」
 
霊を信じたり、まして気にする性格でもないが、さすがにいい気分ではなかった。
 
廊下に出ると何かに引き寄せられるように俺は自分の病室とは逆に歩き出した…
 
まるで声に引き寄せられるように…
 
薄暗い廊下…
 
耳鳴りの様に聞こえるうめき声…
 
不思議なことに、その声は俺がどんなに近付こうと歩いても声の大きさは変わらず聞こえてくる…
 
幾つかの角を曲がり、見たことも無い廊下を抜け、階段を下り…迷いもせず何かに導かれながら進んで行く…

やがて、一つの部屋の前で足を止めた…
 

空調が止まっているわけでは無いのだが、汗が首筋を伝う…
 
心臓の鼓動は次第に早くなり、喉がカラカラに乾いてきた… 

部屋の前でどのくらい時間がたったのかもわからない…
 
ただ、この中にうめき声の主がいる事は分かっていた…
 
そう、そう感じていた…

俺は恐る恐るドアノブに手をかける…

ただ、不安な気持ちが俺に抑止力を働かせ、扉を直ぐに開ける事が出来ず、ドアノブを握りしめたまま固まった…
 
さらに鼓動は早くなり、背中にも汗がつたって来るほど不安な気持ちは膨らんでいく…
 
同時に、抑えきれないほどの好奇心が俺を支配し、その気持ちが不安に打ち勝った時、ドアノブを回すだけの力が働いた…
 
 
…ガチャ…

重厚な音と共に、部屋の明かりが廊下に漏れる…

そして、目の前に広がる光景は異常な世界だった…
 
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