暗闇の中で…(上)
□【車いすの少女】
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それにしても、病院と言うのは待たせるもんだ。
そんな事を考えながら待合所の椅子に座り、天井を見上げていた。
入院の手続きが終わり、簡単な説明を受け、後は病室に案内されるだけになったものの、それからいっこうに名前を呼ばれず、怒りを通り越して呆れるしか無かった。
ふと、時計を目にすると病院に来てから2時間が経過しようとしている…
まったく、こんなに待たせるなんて、診察で来いたら待つ時間で病気が悪化するんじゃにか…と考えていた。
今回は検査入院で、俺自身は健康だと思っているのだから仕方ない。
ただ、待っている間に通る看護婦さん達は好みのタイプが多く、目の保養をしているだけで、思っている以上に暇つぶしになったのは事実だった…
「田辺さん…お待たせいたしました…さあ、病室に案内しますね」
「遅いよ…待ちくたびれたよ…」
「ごめんなさいね」
「お詫びに退院したらデートに誘わせてくれよ…」
「もう。さっきも変な事言って…先生に言っていっぱい血を抜いてもらいましょうね』
「いや…注射は苦手なんですよ…」
その看護婦さんは手続きが終わった後に、俺の担当として入院に対しての説明をしてくれた。
病室の用意をしに行き、やっと戻ってきたが、俺の誘いを上手くかわしながら、小悪魔のように微笑んでいた。
可愛らしく見える外見で、男に慣れていないように見えるが、実際は男からの誘いなんて結構頻繁に受けているのだろう…