暗闇の中で…(上)
□【声に導かれて】
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やっぱり、病院の食事は美味くない…味も薄いし、量が少ない。
酒も出ないし、夕食の時間が18時って…普段ならまだ会社に居る時間だ…
目の前の空になった食器を前にして思っていた…
あの愛という女の子から別れた後、検査以外はすることもなく、空いている時間に院内を散策したり、仕事の電話をしたりと暇を潰していた。 中でも一番時間を費やしたのは目ぼしい看護婦さんへ声をかける事だった。
俺も墜ちたものだ。結局、3人のメルアドしかゲット出来なかった…
食器を片づけ、ベッドに横になり携帯を眺めていた…
それからの時間は正直苦痛で、カード式のテレビを点けたり、売店で買っておいた週刊誌を見たりしていたがそれでもなかなか時間が進まず、この空間だけ時間の流れがゆっくりと流れている…そんな錯覚にさえおちいった…
消灯時間は20時。看護婦が挨拶に来ると、容態はどう?とか決まったような事を聞かれ病室の電気が消される。
横になってはみたがとても寝る気になれず、寝返りを繰り返すだけだった。
こんな所に居たら健康になってしまう…と本気で考えていた。
何度も寝返りをしているうちに、いつの間にか浅い眠りに入っていたようで、所々記憶が抜けている。
時計に目をやると、夜中の2時を回っていた…
意外に進んでいた時間に戸惑いを覚えたが、それよりもトイレに行きたくなりベッドから起き病室を後にした…
廊下に踏みだした瞬間、少し違和感があった…
なんだろう…胸騒ぎだろうか?
知らない土地に来たみたいな感覚…
不愉快な気持ち…
嫌な気持ち…
それは、俺自身、この場所に居たくない…そう心が訴えているようにも思えた…
とにかく用を済ませ寝てしまおうと、足早にトイレに向かう。