暗闇の中で…(上)
□【けだるい朝】
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「田辺さん…そろそろ起きてください……」
その声に一瞬凍りついた…
布団から飛び起きるように上半身を起こし、声の方に目を向ける…
「田辺さん?どうしました? あぁ、ここは病院ですよ、検査入院したでしょ?忘れちゃいました? びっくりしたんでしょ? いつもと違う風景だから?」
声の主は昨日部屋に案内してくれた看護婦さんだった…
俺の反応がよっぽど可笑しかったのだろうか、少し笑いながら検温の準備をしている。
話題を変え、適当にごまかし、会話を続けていた。
「今日は胃の検査ありますから朝食は出ませんので、検温だけお願いしますね。」
そう言って、看護婦さんは俺に体温計を差し出した…
まるで、何事も無かったかの様に時間は過ぎている…
渡された体温計を脇に挟み、恐る恐る聞いてみた。
「なあ、看護婦さん、俺はずっとここで寝ていた?」
「え? ここ以外のどこで寝るんですか? 田辺さんって、面白いですね。今、起きた所でしょ? まだ、寝惚けていたりして…」