〜絆〜
□ドーナツショップ
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その沈黙が嫌で小豆に話しかけた…
「そういえば…俺のこといつ気がついた?」
『え?』
「写真送ったでしょ?コンビニで逢った時にすぐに気がついた?」
俺の問いにゆっくりと答え始める…
『…始めはわかりませんでした。近くにお住まいなのはサイトでの会話を見させてもらっていたので、分ってましたけど…まさかこんなに近くで、お店のお客さんだったなんて…』
「気がついた時は?どう思ったの?」
『すごくドキドキして…私のことバレてるんじゃないかって…知っていてわざとお店に来ているのかなって?』
「知っていてわざと?」
『はい…助清さんを目の前にすると…心の中まで覗かれている気がするんです…お店に来ても、周りの空気とか、なんか怖くて…』
「怖い?」
『はい、始めて電話した時も…さっき駅のホームで見かけた時も…助清さんの声や姿、仕草が怖いんです…恐怖とは違う…自分でもよく分らないけど…』
「…この人は私を知っている…淫らな自分に気が付いている…私の心を見透かしている…仮面の下の本当の自分を…そんな怖さかな?』
『え?…はい…』
「でも、小豆は此処に居る…そうだね?」
『はい…逃げ出したいくらいドキドキしていて…』
「逃げるかい?」
その言葉を発すると大きく顔を左右に振った…
『大丈夫です…』
小豆の気持ちは良く分っていた。
SMの世界に興味がある。
それだけで人には言えない秘密であり、それが自分の心の中で異常な事と思っていた日々…
知らない世界に足を踏み入れる事は、目隠しをして、ビルの屋上の上に立つような覚悟がいる事を俺は理解していた。