Book 2

□puff on a cigarette
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夜中の1時半過ぎ
突然、電話が鳴った
私が布団の中で本を読んでいた時だった


ちなみに鳴ったのは
最近引っ越したばかりで
何も無い私の部屋に
唯一置いてある固定電話だ


私は携帯電話を持っていない
どこにいても話せる
が、売りであろう携帯電話は
性に合わなかったのだ


電話番号は両親と祖母と
恋人にしか教えていない
だから
こんな時間には
恋人しか電話してこない


もしもし
と、言うと
ん、僕…
と、しか言わないのは
恥ずかしいかららしい





もしもし


ん、僕…


こんな時間にどうしたの?


…ん、うん


…んー会おうか?


え?


今から会うの


いいの?


いつもの公園でね


うん、ごめんね?


いい、慣れたから…じゃあね


うん




Tシャツとショートパンツに
薄いパーカーを着て部屋を出る
手には眼鏡と部屋の鍵だけだ


公園に着くと彼はベンチに座っていた
私に気付くと少し手を振った


隣に無言で座る


私の手を握る左手と
新しい切り傷が見える右手




いつもごめんね


いい、慣れたから


ごめんね




なぜ彼がこんなに弱々しいのか
私は理由を聞かない
そんなこと知っているからだ
私にはどうしようもないことだったから
私は何も言わない


でも、なぜか
この弱々しいときの彼が
一番、愛おしく感じる



新しい部屋見たい
と、言い出した彼に
別に断る理由もない私は
彼を部屋に招き入れた



そして
普通の恋人たちがするようなことをした



ふと目を覚ますと隣の彼が居ない
彼はベランダにでていた
空は明るくなり始めた頃で
何色とも言えない空だった



彼の左手のにある煙草からは
むらさきの煙が立ち上る









puff on a cigarette
(君が強くなったしるし)

 
 

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