Book 2

□a mark of wound
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鎖骨の少し下あたりに
プクリと膨らんだ傷痕がある


普通ならきれいに消えるはずだが
何かおかしな反応が起きたららしい
そのおかしな反応とは
拒絶反応のようなものと考えてほしい
と、医者は言った


予防接種をするときに
偶さか医者に言われた話なので
そのときはほとんど流していたが
お風呂に入っているとき
急に思い出したのだ


拒絶反応と言われると
なんとも話がしにくいが
もし本当に拒絶反応だとすると
少し面白い話になる



サークルの先輩と付き合っていた頃
私は常にネックレスをしていた
というより、強制的にさせられていた


もはやそれはネックレスではなく
首輪の意味を成していたのだ


デートはもちろん愛し合う時も
生きてる間ずっと、ずっと



サークルみんなで飲みに行った日
酔った私を先輩は家に持って帰った


酔っていても
何をされているのかはわかる



先輩はいつも終わった後に
私の首輪にキスをする


だがその日はそれがなかった
私の首には何も無かったのだ



自ら取るはずがない
何をされているかわからない相手に
そんなことできるわけがないのだ


だが先輩には私の言葉は届かない


その代わりにつけられたのが
この傷痕だった



だから拒絶反応と言われると
すこし笑ってしまうのだ


言葉は何も
真実を言わない気がした









a mark of wound
(古傷は微笑む)

 
 

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