Book 2

□beloved hum
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文化祭の委員なんて正直かったるい
でもあの人がやると言ったから
友人と私は手を挙げ立候補したのだ

あの人とは友人が思いを寄せている人で
入学式で初めて見たら時から
友人はずっとあの人を好きである
ほんとうにずっと


文化祭の委員は案外楽しいもので
それもあの人がいるからか
友人のテンションは上がりっぱなしだ


文化祭に使う曲を決めている時
私たち二人はイヤホンを片方ずつ付け
友人のウォークマンの中から曲を選んでいた

がらりと扉を開け教室に入ってきたのは
友人の思い人である
友人は片方のイヤホンだけで曲に浸り
気づいていない様子だった

私はイヤホンをとりその思い人に
話しかけるのだ



舞台準備お疲れ

おう それ曲決め?

うん あと1曲決まらなくってさ

なら俺決めてやるよ

そう? じゃあ



私の手からイヤホンを受け取ると
彼は友人と同じ音の世界に行った

友人は隣にいるのが
私でないことに気づくと
みるみる顔を赤くして
女の子になっていった

彼は友人の大好きなバンド名をあげた
友人は一番のお気に入りを流す
私には聞こえないその曲は
彼女たちには聞こえている


彼女が小さく歌詞を口ずさむ
彼も鼻歌で歌う

まるで恋人たちのようだ
私がそう呟くと
友人の思い人は私を見た



そうだね



彼の口は確かにそう言った
そして嬉しそう微笑んだんだ




友人の私は
彼女のお気に入りを知っている


「この4文字が君への想いの全て」






私の想いは1文字多かった









beloved hum
(私の想いが過去形になるとき)

 
 

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