Book 2
□snake gourd
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最後の客
今日で私は終わる
高校を卒業してから何年だろう
何回客の下で嘘をついたのだろう
気持ちよくもない行為を
何百回したのだろう
もう分からない
最後の客は初めての客
常連は全て断った
最後ぐらい
あんな奴らの顔を見ずに
一日を過ごしたい
ホテルの最上階までは長い
エレベーターの扉はいっこうに開かない
地上にいる人間が小さくなり
見えなくなった
まるで消えたかのように
部屋の前には二人の男
私は下品な店の名前と
この何年も偽り続けた名前を告げた
右の男がドアを開けた
どうぞ
という声は低かった
電気が一つも点いていない部屋に
背の高いスーツの男性が
バカに明るい地上を見下ろしていた
__から来ました__です
言って虚しくなる名前は
今日で最後
全て最後なのだ
焦点をずらして見る人の顔
つくられたパターンの囁き
めんどくさい感情
せめて最後の客が
あの人だったらいいのに
そんな事を思いながら
相手のベルトを外す
snake gourd
(一夜だけ思い出した貴方のこと)