book 3

□rain fine
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雨降らし、と名乗る少女が
俺にくっつくようになって3日
雨が続いている


3日前の金曜日
朝起きると雨で
雨かよ、独り言を言うと
「おぬし雨は嫌いか」
とベッドの隣に立つ少女が返してきた


昔から何かは見えていたが
会話したのは初めてで少し興奮した


「おぬしは雨が嫌いなのか」と
もう一度怒った声で言うものだから
少しだけ嫌い、と言うと
「雨降らしに二度とそれを言うな」
と怒られた


雨降らしは雨を降らすのが仕事で
この雨降らしと名乗る少女は
今その練習中なのだそうだ


雨降らしは練習中に
俺の部屋に落ちてきてしまった
と言うのだが
どこから、ときくと
「上から」と答えるので
おそらく天だと思う



日曜日の今日
朝起きると雨が弱くなっていた


隣に寝ている雨降らしを起こすと
「そろそろ迎えがきた」と言うから
寂しくなるな、とこたえると
「おぬし弱いな」と笑われた


雨降らしは俺のリュックに
この世のものをたくさん詰めていた


一番驚いたのは煎餅
昨日煎餅を食べたとき
雨降らしが持つと湿気ってしまって
うにゃうにゃの食感になるが
それが気に入ったらしく
家にあるだけの煎餅を詰めていた


夜雨降らしをお風呂に入れてやった
人間だと5歳くらいの雨降らしと
高校3年の俺は
まるで兄妹のようにお風呂で遊んだ


頭をドライヤーで乾かしてやると
「雨降らしは乾燥に弱い」と言って
寝室のほうへ逃げてしまった


今夜何時に迎えが来るか、ときくと
「それは秘密だ」と答えたので
もうそれ以上は聞かなかった


隣にいる雨降らしにおやすみ、と言うと
「またな」と言った






学校を休んで
父親と一緒にお見舞いにきた


母親と
生まれたばかりの妹のお見舞い


母親に妹の命名を頼まれて
俺はすぐに『晴:ハル』にしたいと答えた



晴れた月曜日

病院の屋上

ずっと遠くにある雨雲が少し笑って見えた










rain fine
(雨が降ったあとの晴れ)

 
 

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