Book 1

□juicy orange
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彼の田舎から大量の甘夏が送られてきた
“彼女さんと食べなさいね”
なんて紙と共に


彼は外の厚い皮も剥ける
中の薄皮も上手に剥く
わたしにはできない
厚い皮なんて指で剥けないし
薄皮を剥くと汁がそこら辺に飛び散る


だからいつも彼にしてもらう
彼が剥いた甘夏は
みかんの缶詰みたいに綺麗な形だ
それを彼はお皿に並べ
二玉ほど剥き終わると手を洗い
フォークを二本持ってきて
私に渡してくれる


“さぁ 召し上がれ”
彼は自慢気にお皿を差し出す
彼の剥いた甘夏は
わたしが剥いたのより
汁が飛んでない分 数倍みずみずしい



厚い皮から出る爽やかな香りと
口いっぱいに広がる甘酸っぱさが
わたしのココロが幸せにする









juicy orange
(幸せの塊をいただきます)


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