Book 1

□start candys
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これ美味しいよ、と渡されたのは
薄いピンク色の三角の飴だ
テストの休み時間なので
みんな必死に教科書を見ているが
飴を渡してきた本人は
笑顔でこちらを見ていた


ありがとう、と受け取ると
彼女はどういたしまして、と微笑み
教科書を睨む人混みへと消えていった


とりあえず脳に餌を与えようと
さっそく飴を口に放り込むと
ミルクと苺の香りが広がった



“俺それ好きなんだよねー”
頭の上から降ってきた声は
私の心臓を大きく高鳴らせた

顔をあげると
声の主はやはり彼だあった
一年生の時から目で追っていた
憧れの彼だった


“お前もこれ好きなの?”
と首を傾げて聞いてくる彼に
私は首を縦に振るしかなかった


“やべ、時間だ 後で俺にも頂戴な”
そう言って手を振って去ってゆく彼を
私は顔を赤らめたまま見つめていた



テストが終わったら
すぐに飴をくれた彼女のもとに走ろう
そして 彼にたくさんの飴を渡しに行こう









start candys
(君のもとへ走る日)


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