Book 1

□milk ice cream
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あの人は白い液体を全てmilkと表現した


だから私がヨーグルトを食べていると
「美味しそうにmilkを食べますね」
と言ってきたし


私の口にホワイトチョコが付いていると
「またこんなところにmilkを付けて」
と優しく指で拭い取ってきた


とにかくあの人にとっては
全ての白い液体はmilkであったのだ



ある雨の日
あの人の家にお邪魔した
論文を書いている途中とかで
パソコンの周りだけが散らかっていた


雨は強くなる一方で
なかなか帰るタイミングがなく
結局家に泊めてもらうことになった
付き合って3ヶ月
私達は二度のキスしかしていない
それも両方とも
どちらかの酔った勢いによるものだ


ベッドの中で彼が言った
“あなたが悪いんですよ。”


私達は時間を忘れて愛し合う


気付くとカーテンの向こうが少し青い


あの人はベッドでうとうとしている私に
アイスクリームを渡した


一個何百円とする高級アイスクリームだ
小さい頃祖父に買ってもらって以来
食べたことがなかった


あの人はそんな高級アイスクリームを
それもバニラとゆう一番美味しい味を
私に渡した

温かい私の口の中で
冷たいアイスクリームは溶けてゆく



“官能的ですね。あなたのその口は”


普段見せないような笑みをしたあの人は
いつもより少し低めの声で囁いた









milk ice cream
(白の与えた幸福)

 

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