Book 1

□little red riding hood
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授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った


室長が号令をかける前に立ち上がり
ぺこーっと深くお辞儀をする


先程まで世界史を熱く語っていた教師も
チャイムが鳴ると疲れきった顔になった


たしか今週は掃除当番だった
東渡り廊下か…
場所がよくわからないが
とりあえず行ってみる


5分遅れで掃除が終わり
友人を待たせてしまった


校門を出てからずっと
友人は新しい靴の自慢話をしている
俺はそれを聞きながら違うことを考える


友人はバスを一時間半ほど乗るので
コンビニで肉まんとピザまんを買っていた
俺は何も買わずに友人の隣にいた


コンビニを出るとき
外にいたやつらに睨まれた
まぁ仕方ないか
友人の原因なのだ


耳にピアスが光ってて
胸元のボタンを大きく開けて
ずるずるとズボン履いて
頭は金髪で…
田舎の学校によくいる格好だ


友人に対して俺は
パーカーのフードを被って
学ラン着ているだけだから
睨まれたのは、とばっちりだ


友人が乗ったバスを見送ってから
俺は近くの総合病院を訪れた


正面玄関から入ってすぐの階段を
二階まで上り
左に曲がって三つ目の部屋に
俺の祖母はいる


祖母は俺に言う
「これこれ、
部屋の中で帽子は脱ぎなさいよ」


俺は被っていたフードを外す




祖母は知っているのだろうか
俺がわざわざフードを被ってくる事を
俺がわざわざ赤いパーカーを着てくる事を


祖母は覚えているのだろうか
俺が昔好きだった童話を









little red riding hood
(赤頭巾はお婆さんのお見舞いに)

 
 

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