Book 1

□humph humpback
1ページ/1ページ


あの人はいつも何かを削っていて
ずっと下を向いていた
だから背中は猫のように丸かった



工作部とゆう未知の世界へ
飛び込むつもりはなかったのだが
部活見学であの人の背中を見たら
入部以外の考えはなくなった


あの人の背中は
なんともいえない
「男子」の感じがした


しかし素敵な背中を知る者は
すでに一人いた


それがあの人の彼女だ


彼女とゆうのはただの憶測だが
あの彼女の話しかけ方は
恋人同士にしか見えなかった


メイクしていて
巻き髪で
スカートは膝上


あの人と正反対の人間だ


彼女は月水金だけ部室に来て
あの人が作業をする背中に
ずっと話しかけていた


あの人は彼女の話を
うんうんと返事をして聞いていた


夏休みが過ぎてから
彼女が来なくなった


部員のみんなは
うるさい人がいなくなって良かった
なんて言っていたが
あの人は何も言わなかった


むしろ寂しそうな背中になっていた


わたしはあの人にきいた




あの 先輩


ん?


質問いいですか


どうぞ


彼女さんとは別れたんですか


へ?


週に3日ここに来てた人です


あー…


あ 傷口抉るような事してごめんなさい


いや ちがうんだ


ほんと ごめんなさい でも 気になって


いや 彼女は妹だよ


え?


僕の妹で君と同じ一年生だ


でも 見たこと…


週に3日しか来てなかったからね


3日?


あぁ 体が弱くてね


でも なんでいつもここへ?


中学をほとんど行っていない彼女にとって 兄貴である僕が唯一の友人だからね


じゃあ なぜ 最近は?


夏休み中に引いた風邪が長引いて


そうなんですか……


君の質問は終わりかい?


あ はい なんかすみません


いや 謝らなくてもいいよ そのかわり


そのかわり?


頼み事があるんだ


はい どうぞ


妹の友人2になってくれないか?


へ 友人2?


そう 友人2だ


友人になるのは構いませんが なぜ2?


友人1は僕だからね


でも兄妹なんだし……


いいの シスコンでも


あはは シスコン


そうさ シスコン


シスコンのお兄さんに頼まれては断れませんね


どうか よろしく


はい 任せてください


じゃさっそく 今日お見舞いに来てくれ


仕方ないですね シスコンお兄さん


じゃ 行こう友人2




あの人の背中は真っ直ぐ伸びて
きちんと前を向いていた









humph humpback
(下をむいてばかりじゃない)

 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ