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□poke4
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カントー支部、ポケモンリーグ



「今回集まってもらったのは他でもない、これについてだ」

現チャンピオン、ワタルが机に取り付けられたスイッチを押すと、背後の画面に大々的にサカキの演説らしき映像が流れる。その画面の光りにワタルに呼び出された者達の顔が青白くひかる。この映像は今日の昼間、突然全チャンネルに放送されたものだ。
このなかにはグリーンの姿も見られた。皆が着席する中、グリーン一人だけ出入口近くの壁に寄りかかっていた。





演説の内容の、ロケット団は世界を掌握するため裏の世界から表へと進出する。そして悪を知るものが世界を正すことが出来ることを証明するために新しい国家を作り上げる。その基盤としてカントーを潰す、というものだった。
グリーンはそう豪語するサカキに静かに奥歯を噛み締めた。そして鋭い視線はワタルへと向けられる。


椅子なのにその上に正座するアンズが眉を潜める。

「これって…宣戦布告ってやつ…ですか?」

「恐らくな…」

その呟きに彼女の父のキョウが、同じく正座をして神妙に答える。
一番前に座ったマチスは逞しい腕を交差させて不適に笑う。

「はっ、いつかまた現れるとは思っていたがな」

「ですが、やはりまた争うことになるのでしょうか…」


アリカの言葉にこの場にいる全員が息を飲む。そして、かつて存在した島々の消失事件が脳裏をよぎった。
その空気に水を指すようにカスミが声を張り上げる。


「なによこんなの!脅しなんてロケット団の常套手段よ!あんな奴等また懲らしめてやればいいじゃない!」

「…ところがそうもいかないんだ」

ワタルの言葉にカスミを含む全員がワタルを見る。


「あの時は、ロケット団は我らのすぐ近くにいた。活動だって大雑把で、とにかくロケット団という名を世に知らしめたいとでもいうように。奴等はマフィア集団で、裏にはどんなやつが潜んでいるかも分からない。きっと今回に備えて何かを用意しているに違いない」


ワタルの言うことも最もだ。解体したという知らせを受けてから今まで、裏でいったい何をしていたのか知るものはいない。


「それに、最初に彼らの非道に一番早く気付いたのがあの少年、レッド君」

最早カントーでは有名となったレッドという名前は、ロケット団をたった一人で潰したという功績で、巷では伝説とまで呼ばれマサラタウンには多くの観光客もやって来ているという。
アンズは当時のことはよく分からないのか、隣のキョウに耳打ちしている。

「しかし、ロケット団の一件が終わった途端彼は行方をくらました。彼の母親も知らないという。そこで私は、彼は恐らくロケット団の何かを知ってしまい、姿を消したと見た」


ワタルの発言に周りはざわめいた。
今まで冷静に聞いていたタケシが、椅子の背に肘をかけながら、しかし真剣に口を開いた。

「そんな憶測の話をしていいのか?今はこのカントーの緊急事態だぞ」


「それは重々承知している。だが、まだ相手の出方も分からないままでは、相手が行動し始めるのを待つしかない。しかしそれでは遅いんだ…」

彼らはジムリーダー達の知らない所で密やかに、しかし着実に下準備をしていた。その結果が島の消失とジム内部へのロケット団の侵入へと繋がった。また同じような悲劇をうみだしてはならない。


「その為に、私はレッド君を呼びにいく。きっと彼も協力してくれるはずだ」

そう簡単に上手くいくとは思ってはいない。だが、話だけでも聞いてほしいのだ。

彼の言葉にマチスが立ち上がった。

「俺たちはどうすればいい?あの占い師に聞こうにも体調が悪いそうじゃないか」

マチスの言う占い師とは、ここに来るはずだったジムリーダーナツメのことである。ナツメの超能力ならばロケット団が何をするのか先読み出来るかもしれない。しかし、数週間前から頭痛を訴えはじめ今では寝込んでしまうほどである。彼女ほどの能力者が倒れてしまうのは、何かの予兆ではないかと周囲の者達は騒ぎ始めていた。

今ここカントーは混乱状態といってもいい。その為には、リーダーはどうするべきか…

どうあるべきか……




「…可能であれば裏の情報収集を頼む。それと、あとで私が首相に然るべき措置をとるよう連絡しておく。警察を動かせるのは政治家だからな。皆、ロケット団に備え、準備を怠らないように。では解散」


次々と席を立ち、帰路につく。
ため息をつき、肘掛け椅子にトサリと座る。これで少しは遅れをとらずに行動できるだろうか、不安なことは山積みであるがこれで警戒網を張ることができたか。

あとは……





ワタルは出入口の方に視線を向ける。
そこには鉛色をした壁だけだった。
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