短編ぶっく

□03/27~02/15
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 尾行されている
 それはもう勘ではなく、事実だ
 足音を立ててない



 さすが、とでも言っておこう
 でも俺はお前を殺めないと気がすまない




「隼総?」
「お前は何ものだ?」



 ピタリと動きを止め、直立不動になる
 お互いの顔は合わせない
 合わせないっていうより、どうせ顔を隠しているだろう




「僕?僕は今までさあ、長屋に居たんだよねえ。僕さあ、外見女の子っぽいんだよねえ」
「何が言いたいんだよ」
「隼総さん」




 その声に驚き後ろを振り向く
 その瞬間、刃物で脇を刺された




「よ、い?何、で!」
「何で?それはお前たちが僕の家族を、友人を、慕っている人を殺したからだよ。復讐して何が悪いの?」
「てめえら、は!不正ばか、りしてた!そんな奴ら、をどうして許すんだ!」
「それでも、どうして殺したの?その人たちにも家族いるんだよ?ねえ?」




 グサリ、とまた新たな箇所に刺す
 口から出てくる血
 くっそ、こんな所で、死にたくねえ




 俺たちは正しい
 それは当然だ
 それを否定されんのは許せねえ





「それはお前たちが死んだあとに判断されんの。僕があってたか、お前たちがあってたか」
「...お前、人のこと言えねえな」
「はあ?」
「お前だって、人殺しじゃねえか」
「五月蝿い!」




 今度は深く刺された
 や、ばいな。視界がぼやける
 




「誰だかわかんないようにしてやる」




 
 その言葉が、人生で最後に聞いた言葉だった
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