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□幸せを噛み締め
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「…最近さ、妙の様子がおかしいんだけど…」



いつもの万屋。

いつものメンバー。

いつも通りだったはずの部屋には銀時の小さな呟きが響いた。




「…はい?」

「何言ってるアルカ?」



神楽は心底不思議そうに首を傾げた。
しかし、新八は不思議そうにしながらも、頬が若干ひきつっている。



それに気付かない神楽はなにかを思案するように唸る。




銀時は新八をジッと、その紅い双鉾で見返す。



「……なんかよォ、最近、常にぼんやりしてて、なにか考え込んでる様子なんだわ」




知ってることあんなら吐けや。


わずかな副音声が聞こえるのは気のせいだろうか。

徐々に視線を銀時からそらせながら言う。


 
「そ、そうですか?僕にはいつも通りにしか見えませんでしたよ」

「だからてめぇは駄眼鏡なんだよ!」

「眼鏡関係ねぇだろ!!」

「…姉御、悩み抱えてるアルカ?」




心配そうに少女が言ったところで、新八は立ち上がった姿勢のまま制止する。




…あれも、悩みごとなんだよな?

そうなんだよな?


ついつい固まって神楽を凝視してしまったせいか、ガシリと、銀時の腕が首に絡み付いてきた。



「…なにか知ってるのかなぁ、新八くん?」



無駄に笑顔で、迫ってくる銀時に恐怖心が身体を支配する。

 
「いやいや!?な、なにも知らないですってば!!ホントですよ!?」



それだけ言うと、わざとらしく大声で知らないを連呼しながら出ていった。


「…神楽ぁ…」

低い声が聞こえてきた。



ビクリと肩を跳ねさせ、恐る恐る銀時を神楽は見る。




「……行くぞ」

「ル、ルージャ!!」

ビシリと敬礼し、銀時と共に行く。























一方、志村邸では。

妙が暗い顔をして台所に立っていた。





彼女の前にはたくさんの料理(?)の残骸が。

はぁ、と深くため息をつく妙の背中には哀愁漂うものが。




「…どうしましょう」



ポツリと呟き、台所に手をつく。

考え込む妙の耳に、ドタドタとした足音が聞こえてきた。




「…姉上ぇぇぇええええ!!」

「…もぅなぁに?うるさいわよ、新ちゃん」



 
眉を潜めて走ってきた弟を叱る。


すいません、と小さく謝りながら台所の惨状を見る。

「…姉上…」

視線をさ迷わせながら言う。
なにを言ったら良いのかわからないのだ。



「…やっぱりダメね」



寂しげに、哀しげに微笑む妙は、泣くのを我慢しているようにも見えた。

気の効いた言葉をかけられれば良いのだが、生憎となにも浮かばない。


 
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