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□家族
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「今日の午後ですよね?高杉さんたちが来るのって」



ベランダに洗濯物を干しながら新八が銀時に聞く。

慣れた手つきで綺麗に干されていく洗濯物を見ながら銀時は言う。




「おぅ。…ったく暇人共が…」


ぶつぶつと言いながらも本人は至って嬉しそう。



…そんなことを言ったら照れ隠しの木刀が飛んでくるので絶対に言わないけど。















紅桜の件で袂を別った高杉晋助。

なにがあったのか、ある日突然、下のスナックお登勢に三人仲良く飲みに来たのだ。



ビクビクと怯える新八に威嚇する神楽。


そんな二人に罰が悪そうに小さく謝った高杉。



唖然とする間もなく始まった飲み会に、いつしか二人は笑いっぱなしだった。



 
なによりも、銀時が、笑顔でいたから。



それから度々万屋に現れるようになった桂と高杉。


未だ緊張はするものの、新八から高杉に対する恐怖は少しずつ、薄れていった。





「新八ィ〜?茶ぁ入れてくれや」

「ちょっとは自分でやろうとか思わないんですか!!」

「あぁ?新八の役割とっちゃダメだろ?」

「なに当然のように言ってんだコノヤロー!!」

「メガネ(新八)、早く淹れるヨロシ。酢昆布あったらなおヨロシ」

「今なんて書いて新八って読んだァァァ!!」

「早くしろよ」


  
ギャアギャア騒ぎながらもちゃんとお茶を淹れてくれる新八。



三人でソファーに座り暇を持て余す。




依頼がないのは非常に残念だが、こういう穏やかな時を過ごすのは好きだ。



…そんな“時”を破ったのは、一本の電話だった…。








ジリリリリリリッ、ジリリリリリリッ…。



突如鳴り響いた電話に驚く。



「…依頼、ですかね?」


なんでだろう。
いやな予感がする。



「…なんか、怖いネ…」



小さく震えた神楽の頭を撫で、銀時に目を向ける。




「ま、出てみりゃわかんだろ」


彼も不安を感じたのだろうか。





「…万屋銀ちゃんでーす」


いつものようにダルそうに出る銀時にほっとする。



「…あ?万斉くん?」


 
意外な相手の名前が出てきて思わず神楽と二人、顔を見合わせた。





「…は?いやいや、なに言ってンの?…………え?」




なんの話なんだろうか。

だんだんと困惑が滲み出る声になる銀時。



「…あぁ、わかった。…晋助は?…わかった。一緒に“逃げる”」




普通の、会話じゃない。

なにか大変なことが起こったんだ…。




電話を早々に切った銀時は振り返る。



その表情はいつもの銀時じゃなくて、悲しいような、泣きたくなるような、親に怒られる子供のような…。



そんな、複雑な表情をしていた。



 
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