図書館戦争

□Help me.
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 今朝は少し目覚めが良かったので、郁は早めに出勤した。
「おはようございまーす」
 おはよう、と飛び交う声の中に──
 ……あれ?
 いつもと何か違う気が……。
 ──あ。
 必ず先に来ているあの人の声が無いことに気づいた。
「小牧教官、おはようございます」
「おはよう」
「あの、堂上教官はどうしたんですか?」
「ああ、堂上は今日研修で武蔵野第二図書館の方に行ってるよ」
 そういえば先週そんなこと言ってたような、そうでもないような……。
 その時肩を軽く叩かれた。
「笠原、今夜予定ある?」
 図書特殊部隊の先輩だ。
「いえ、ありませんけど……」
「今夜の飲み会来る?」
 確か柴崎も今夜は飲み会だと言っていた。
 堂上班が揃ってないのは寂しいが、断る理由も無い。
「はい! 行きます」
「あれ? 笠原さんも来るの?」
 小牧は意外そうな顔をしている。
「今日柴崎も飲み会だと言ってたので」
「へぇ……」
 そんなことを話している内に始業時間になった。



 今日の飲み会はいつも送ってくれる人がいないので、酒は飲まなかった。
「あのー、笠原帰りまーす」
「お? もう帰るのか」
「はい。ちょっと眠くなっちゃったので……」
「笠原、送る」
 手塚の意外な申し出に一瞬戸惑ったが断った。
「笠原さん大丈夫? 夜だし……」
「はい! お酒飲んでないし、距離も近いので大丈夫です!」
 自分が払う分の料金をテーブルの上に置き、走って出ていった。

「あー。笠原さん本気で走ってっちゃった……」
「今からじゃ間に合いませんよね……」
「大丈夫。心配しなくていいよ、手塚」
 そう言いながら小牧は携帯を取り出した。



 ──断るんじゃなかった。
 そう思ったがもう後の祭だ。
「ねえねえ彼女、何処行くのー?」
 ……やばい。
 郁は路地裏で完全に囲まれてしまった。
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