図書館戦争

□Match start.
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『今夜は関東地方全体に大きな雪雲が覆っています。東京、神奈川、千葉では初雪となる可能性が高く……』
 夕飯を食べ終えてから、郁は柴崎といつものように部屋でくつろいでいた。
 冬はコタツに入り向かい合って雑談をするのが定番である。
 嬉しことに今日はコタツの上にみかんがのってある。
「雪かぁー。なんか今日寒いなーって思ってたんだよね」
「寒いって……アンタ今日内勤だったじゃない」
「う〜〜〜〜〜。でも寒いじゃん! 廊下とか! それに今夜雪なんか降ったら明日絶対雪かきの仕事やらされるよ!」
「まぁ良いんじゃない? 図書特殊部隊の面子が揃ったら雪かきじゃなくて雪合戦が始まると思うわよ。それに堂上教官もいるし」
 柴崎は『堂上教官』のところを強く言った。
 何で教官がそこに入るの、と訊こうとした時に郁の携帯が鳴った。
「ほらねー。アンタには愛しの堂上教官がいるから」
「……何で画面見てないのにわかるの?」
 携帯の画面に映しだされた名前は堂上だった。
「そうねぇ……強いて言うなら顔?」
「顔!? あたしそんなに変な顔してた!?」
「いや、可愛い顔だけど。……ってゆうかアンタ、毎日呼び出されてるじゃない!」
 郁は驚いて剥いていたみかんを落とした。
 堂上に毎晩呼び出されるようになってから一週間。
 誰とは言わなくても柴崎が相手を確信するには充分すぎる時間である。
「ラブラブなのはいいけどねー。……たまにはアンタから仕掛けてみたらどう? 教官も喜ぶと思うわよ?」
 呼び出されて何をしているのかも柴崎にはお見通しらしい。
「とっ……とにかくちょっと行ってくるね!」
 郁は部屋を飛び出して行った。

「あの子、本当に堂上教官のこと好きよねー……」
 さっきまであんなに寒いって言ってたのに、教官が絡むとすぐこれなんだから。
 そう呟いてから柴崎はみかんをひとつ取って剥いた。



 ──たまにはアンタから仕掛けてみたらどう? 

 柴崎の台詞が離れない。
 仕掛けるって……何を?
 ……キスを!?
 あたしから!?
 頭を悩ませているうちに、待ち合わせのロビーに着いた。
 呼び出した相手はもう靴を履いていた。
「教官! お、おまたせいたしました!」
「いや、待ってない」
 郁も靴を履き、外に出る。
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