図書館戦争

□Victory or defeat.
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 その日は久しぶりに堂上班が訓練日だった。
「──今日は全員のタイムを計る」
「えっ!」
 堂上班の中で一番食いついたのは郁だ。
「何メートルですか!?」
「あらゆる場面を想定して百メートル、二百メートル、四百メートル、千メートル。それぞれ二回ずつ計るから、それも頭に入れておけ」
 郁の目が輝いている。
 手塚は左隣に立っていた小牧に訊いた。
「小牧二正……何でこいつ、こんなに張り切ってるんですか?」
「笠原さん陸上やってたからね。久しぶりにタイム計れて楽しいんじゃない?」
 小牧は微笑んだ。
「班で二人ずつ録るから……最初は笠原と手塚、行け」
 はい、と言い郁と手塚は敬礼する。
「じゃあ俺がストップウォッチやるから。二人ともスタートラインに立って」
 小牧がストップウォッチを受け取りスタートラインを指差した。



 郁と手塚がスタートラインに立ち、堂上が旗を持って横に立った。
「用意──」
 堂上が旗を勢い良く振り上げる。
 その瞬間、郁はタイミング良く飛び出した。
 ワンテンポ遅れて手塚も飛び出す。
 二人の差が少し開いたところで郁はゴールした。
「笠原さん12.30! 手塚12.58!」
 手塚の息が切れている。
「お前……、速……」
「タイム落ちたな」
 赤かった手塚の顔が青ざめた。
「タイム落ちたのか!?」
「前に計った時はあと0.2は速かった」
 郁はスタートラインを振り返った。
「堂上教官─────! もっと速い人と走りたいです─────!」
「なら堂上かな」
 堂上の代わりに小牧が答える。
「堂上なら俺より速いしそれに……ククッ、面白そうだよね」
 郁は小牧の言っている意味が分からなかった。
「笠原─────! 早く戻ってこい─────!」
「あ」
 郁は次に旗を持つことを忘れていた。
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