図書館戦争
□Didn't stop.
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*
見上げるとそこには青い空。
綺麗に浮かぶ飛行機雲。
「今日も平和ですね〜〜」
郁がそう呟くと遠慮無く頭を叩かれた。
「無神経な発言をするな! ……まだ哨戒中だ」
「はい……」
その日は堂上班が図書館周辺地区の哨戒する日だった。
「そういう発言は何事も無く無事に図書基地へ帰ってから初めて言うものだ」
「はい……」
堂上はまだ拳を握っている。
「それにしても……良化機関の車、見つかりませんね〜〜」
郁は殴られた箇所を擦った。
「しかし前回の検閲からだいぶ時間が経っている。いつヤツらが仕掛けてきてもおかしくない。よく探せ、笠原」
「はい」
その時堂上の無線に連絡が入った。
連絡を聞いた堂上の表情が曇る。
「──了解」
堂上は郁の目を見つめた。
「来た」
「えっ……」
来た、というのは──
「良化機関だ。急いで戻るぞ」
堂上は郁の手を引き、来た道を走って戻った。
*
正門をくぐった瞬間、銃声が鳴り響いた。
検閲はもう始まってしまったらしい。
「堂上教官ッ!! こういう時ってどうすれば良いんですか!?」
「図書館から一番遠い入口を使って基地へ入る!! 急いで着替えろ!! すぐに加勢するぞ!!」
ふと図書館側を見た時、何かが三階の窓から落下した。
茂みの中に落ちたらしい。
草木が揺れる音がした。
「──笠原!?」
郁は方向を変え、茂みの中へ飛び込んだ。
*
「──やっぱり……」
落下した物は背嚢だった。
中身を確認すると、いくつか検閲対照の本が入っている。
間違いなく良化機関のものだ。
上の階から本を落とすのが最近の攻撃パターンらしい。
背嚢のみが落ちてきた、ということは背嚢を落とした良化隊員は負傷したのか……。
それならば。
「もっと図書館の方に寄らなきゃ」
きっと地上にいる良化隊員が背嚢を回収しに来る。
ならば図書館の方に寄った方が時間を稼げるはずだ。
「よぉし──」
郁が背嚢を担いで立ったその時──
「アホか貴様ッ!!」
堂上が郁を正面から倒した。
背中を強く地面に叩きつけられる。
それと同時に銃声が響いた。
そしてそれまで背を向けていた木から一本の細く白い煙が昇っているのが見えた。
「動くな」
堂上の息が耳にかかる。
呼吸が荒い。
ただの命令にもかかわらず郁は紅潮してしまった。