図書館戦争
□I need.
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「──愛って、何だと思う?」
グラスを口に付けたまま手塚は固まった。
「……ちょっとタンマ」
そう言ってから携帯を取り出し、操作し始めた。
「……一、親兄弟のいつくしみ合う心。広く、人間や生物への思いやり。万葉集括弧五括弧閉じ……」
「広辞苑で調べた文章読み上げなくていいから」
柴崎は手塚の頭を叩いた。
しぶしぶ携帯をしまい込む。
「そういう堅っ苦しい文章じゃなくてさぁ……手塚にとって……愛って、何?」
──酔っているのだろうか。
普段なら絶対訊かれることのない質問を投げられ戸惑う。
「そういうことを普通恋愛オンチのヤツに訊くか?」
入隊当時、弱点を見抜かれたからという理由で郁に交際を申し込んだほどだ。
訊く相手を間違えているとしか思えない。
「違うわよー。……アンタだから訊いてんの」
──あたしさぁ、昔この顔のせいで色々あって。
すっごく恋愛とかしにくい体質になってんの。
……絶対あたしに興味持たなそうな人にしか興味持てなくてね──
朝比奈と別れた後に柴崎が言った台詞を思い出す。
──だからあたしに興味津々な朝比奈さん相手には絶対に恋愛にならない自信があったわ。
──実際ならなかった。
多少の情は湧いたけどね──
柴崎の横顔を見つめる。
──ああ、そうか。