図書館戦争
□A true reason.
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「……シャワーにお湯が来ない」
小牧が吹いた。
お湯はシャワーよりもキッチンの方に優先的に流れるため、皿洗いなどをしていると冷たい水を浴びることになる。
「あはははは!! なるほどね! 夫婦ならではの嫌がらせだね! 他には?」
目に涙を浮かばせながら小牧は訊いた。
「まだ聞くのか!?」
「まあいいじゃないか、堂上。不満な所言っちゃった方がすっきりするし」
少し躊躇したが結局言ってしまった。
「……喧嘩すると絶対二人で寝ようとしない」
「へぇ……。じゃあ昨日も?」
「……ああ」
それは困るなぁ、と小牧は呟いた。
「ちゃんと眠れなくて翌日イライラした堂上を相手にするのは俺か手塚なんだよ?」
「おい、それどういう意味だ」
「さあねー」
しれっと流されてしまった。
「……で、何で喧嘩したの?」
──できればそこは訊いてほしくなかった。
それは夕飯の時の会話からだった。
*
「篤さんが子供の頃好きだった本って何?」
夕飯のハヤシライスを口に運びながら郁は話し掛けた。
「──郁は」
「あ〜〜、あたしは……」
出てきたのは静佳が小学生の頃読んでいた本のタイトルばかりだった。
「……それで、篤さんは?」
「……」
堂上は答えなかった。
無言のまま席を立つ。
「ねぇ、篤さん」
「……シャワー浴びてくる」
「ねぇ! 訊いてるんだけど!?」
怒っている郁を無視して堂上は風呂場に向かった。