図書館戦争

□A true reason.
1ページ/6ページ




「──笠原」
「……」
「……い」
「笠原さん、そろそろ警備の時間だよ」
「あ、はーい。わかりましたー」
 ──何やってんだ、アイツ……。

「……あー、今夫婦喧嘩してるんだって。だから手塚、今日は笠原さんとバディね」
 これって公私混同のような気もするけどね、と小牧は苦笑いした。
 夫婦喧嘩と小牧は言っていたが、実際にはもう堂上の方が先に折れているように見える。
 その証拠に堂上は勤務中にもかかわらず郁を名前で呼びかけた。
 つまり、郁が一方的に拗ねているだけなのだ。
 それならば──
「早く堂上一正と仲直りしてくれ」
「……やだ」
 手塚の小さな望みは一蹴された。
「……じゃあ何で喧嘩なんかしてるんだ?」
「……やだ」
「お前ちゃんと人の話を聞けよ!」
「うるさいっ! 館内は静かにしなきゃいけないのよ!」
 こういう時に限って規則引っ張り出してきやがって……。
 ──お願いだからこっちのことも考えてくれ!!
 それからしばらく郁は手塚にも口を利かなかった。



「あいつ、本当に恐ろしいぞ」
 あいつとは今ここにはいない彼女のことを指しているのだろう。
「どこが」
「……まあ色々と」
 堂上は深く溜め息をついた。
「ささやかな嫌がらせが多すぎる」
「と言うと?」
「……家でわざと教官って言ったりとか」
 小牧は相づちを打った。
「笠原さんらしいね。他には?」
「他か……ああ、俺が風呂に入ってるときにわざと皿洗いをするんだよ」
「……それが何で嫌がらせに入るの?」
 話を理解できなかった小牧のため、堂上は意味が通じるように言葉を足した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ