図書館戦争
□A true reason.
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*
「──笠原」
「……」
「……い」
「笠原さん、そろそろ警備の時間だよ」
「あ、はーい。わかりましたー」
──何やってんだ、アイツ……。
「……あー、今夫婦喧嘩してるんだって。だから手塚、今日は笠原さんとバディね」
これって公私混同のような気もするけどね、と小牧は苦笑いした。
夫婦喧嘩と小牧は言っていたが、実際にはもう堂上の方が先に折れているように見える。
その証拠に堂上は勤務中にもかかわらず郁を名前で呼びかけた。
つまり、郁が一方的に拗ねているだけなのだ。
それならば──
「早く堂上一正と仲直りしてくれ」
「……やだ」
手塚の小さな望みは一蹴された。
「……じゃあ何で喧嘩なんかしてるんだ?」
「……やだ」
「お前ちゃんと人の話を聞けよ!」
「うるさいっ! 館内は静かにしなきゃいけないのよ!」
こういう時に限って規則引っ張り出してきやがって……。
──お願いだからこっちのことも考えてくれ!!
それからしばらく郁は手塚にも口を利かなかった。
*
「あいつ、本当に恐ろしいぞ」
あいつとは今ここにはいない彼女のことを指しているのだろう。
「どこが」
「……まあ色々と」
堂上は深く溜め息をついた。
「ささやかな嫌がらせが多すぎる」
「と言うと?」
「……家でわざと教官って言ったりとか」
小牧は相づちを打った。
「笠原さんらしいね。他には?」
「他か……ああ、俺が風呂に入ってるときにわざと皿洗いをするんだよ」
「……それが何で嫌がらせに入るの?」
話を理解できなかった小牧のため、堂上は意味が通じるように言葉を足した。