作品2

□お前には渡さないから
2ページ/7ページ



三好。俺の弟の友達、らしい。下の名前は知らない。弟は三好としか言わないからだ。
あまり学校に行かない弟は新しい友達をつくることは少なくなく、俺にその友達の話をしてくれるのも少なくない。が、“三好”のこととなると何時もと違った。

「なあ兄貴聞いてくれよ、今日三好がさ―――」
「黄巾賊の集会に行ったら三好が―――」
「さっき三好が―――」
「三好マジ天使―――」
「三好……」

まあこんな感じで三好三好と病気かと疑うくらいうるさい。最近は酷いもので携帯を見つめながらアンニュイな溜め息をついて三好と呟いていた。……三好って、友達だよな。というか、三好ってどんなやつなんだろう。弟の感じからして悪いやつではないんだろうけど……弟がなんか惚れてる感じがするのがまた恐ろしい。まさかの女の子だったり、今流行りの男の娘とか?……ガチホモ?やめてくれ。
と、俺の中の三好像が恐ろしいことになってきたので。
実際に会ってみることにしました、まる。




「さーてと、何処に行けばエンカウントするかなっと」

そんでもってやってきました黄巾賊の溜まり場のゲーセンに。
早速入って黄色い集団を探してうろうろすると、デb……太めの黄巾賊のヤツと目があった。
名前はたしか、シダだっけ?

「あ、ヒロさんじゃないっすか。ちわっす」
「おう久しぶりー。元気してたか?」
「ヒロさんもお元気そうで何よりっす」
「シダもでかくなってて何よりだよ」
「……なんで腹回りを見て言うんすか。あと俺はシダじゃなくて黒田っす」
「マジ?黒田ごっめーん☆」
「真面目に謝る気更々ないっすよね」
「餅の論!」
「即答されたっす!?しかもなんかおかしいっすよ!?」

シダ、じゃなかった、黒田との軽い掛け合いに懐かしさを感じて思わず笑うと、黒田が訝しげにこちらを見た。失礼なやつだなオイ。

「で、いったいなんの用なんすか?黄巾賊を辞めたあんたが理由も無しに来るとは思えないっす」
「……相変わらず鋭いね、黒田。まあ用があったから来たんだけどさ。―――三好って奴ここにいる?」
「三好?ああ、いるっすよ。てかなんで三好?」
「ああ、弟のお気に入りらしいから見に来た」
「……俺の予想よりも下らない理由っすね。というかアレは谷田部のお気に入りというより谷田部が惚れてる相手というか……」

ほうほう、弟の恋患いの相手、と……ん?

「ちょっと待った黒田。ワンモアプリーズ?」
「谷田部が惚れてる相手っす」
「……もう一回」
「何度いっても同じっすよ。谷田部は三好に片思いしてるんす」
「……三好って、男だよな」
「はい」

どうやら俺の耳と脳は正常だったようだ。そしてガチホモは弟のほうだったようだ。いや偏見は持ってないけどよ……予想の斜め上な事実にお兄ちゃんついていけないよ。
そして黒田よ、その言い方だと俺が三好のこと好きみたいに聞こえるんだけど。俺も谷田部だぞ一応。




次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ