血塗られた兵器


□序曲
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「いい眺めですね」



アルティス=ブランディーが

苦しみにうずくまる頃。

その学校に、一人の男が訪問していた。

青みがかった長髪を

月明かりの中になびかせる。

その姿は

この世のものとは思えないほど

美しく

人間離し

酷く危機感を覚えさせた。

「少し窓を開ければ、

木々と月明かりのコントラストが美しい

校庭が見渡せる」

男が声を発すると、

不思議な空気が部屋を満たす。

「しかも、こんな美しい序曲が聞ける。

なんて素敵な場所」

落ち着いた物言いは

一見すれば好印象だったが

見つめれば不安になる。

そんな気味の悪さを感じさせた。

「この学園は、素晴らしい所ですね」

男は振り返り、

「ねぇ、ハイアット校理事長」

同席している男、

ハイアット校の理事長に

作り笑いを見せる。

その作り笑いに、

理事長も作り笑いだけを返す。

何も言わない理事長に対して

不服も漏らさず、

男は続けた。

「ここに絶えず流れている序曲は

繁栄へ繋がるのか 崩壊へ……繋がるのか」

男は、自分だけが感じることができる

曲の始まりに

身をゆだねるように目を細めた。

「でも……いや、だからこそ……

どこへ誘うかも解らないからこそ

この曲は 美しい」

男は一人、つぶやく。



――絶望へと導く舞台の幕が――上がる
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