土銀
□ LOVE COMMUNICATION3
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あれから、さすがにここでは人目が多すぎるから嫌だ…と、銀時は何とか土方を説得した。
人目が恥かしいとかではなく、銀時は隊服姿の土方の立場を考慮したのだ。
ついでに、ここじゃなければいい…と付け足した為に、今は別の旅館に連れ込まれている。
「だから、脅されてだな……」
「脅されて売春したのか!?」
「違ぇーよ! バケモノに脅されて、オカマ倶楽部でホステスやってただけだっつってんだろうがよ!」
連れ込み旅館に入ったものの、二人の会話は堂々廻りで、一向に収まりがついていない状態だった。
「……ふん、まあいい。調べりゃ判ることだ」
ぐい…と肩を押されて、銀時は躊躇しながらも、素直に布団の上に倒れ込んだ。
「だったら、気が済むまで調べてみろよ。その代わり…俺の潔白が判ったら、チョコレートパフェと抹茶パフェ一年分だからな」
潔白なのは、銀時が一番よく知っている。
好きに調べさせるのだ。それくらいの見返りがあっても許されるだろう、……と。
「いいだろう。そん代わり、徹底的に調べてやるから覚悟しやがれ」
そう言って、土方はニヤリ…と笑った。
含みのある笑みに…ゾクリとした悪寒が走る。嫌な予感に、
「だ、だからって、乱暴にすんじゃねーぞ」
銀時は慌てて条件を付け足した。
調べてやる…と、銀時の女装を解かないまま、その身体を組み敷いた。
帯を解かずに着物の裾を割り広げ、煌々と点けた照明の明かりの下で、下半身だけを露わさせる。
(肝心なモンが付いてなけりゃ、女みてーだな)
女装しているといっても、銀時の体躯は自分と変わらない。だが、色素の薄さと気だるげな雰囲気が妙な色気を漂わせている。
(さっきの男も…これにやられたのかもな……)
うっかり、銀時を抱いていた男の姿を思い出して、先ほどの殺意がフラッシュバックする。
その矛先を銀時にも向けたくなる。
「随分と濡らしてんじゃねーか。俺ァまだ触っちゃいねーはずだぞ、銀時」
すでに形を変え、蜜で銀色の下生えまで濡らしていることを指摘する。
「う、うるせーな。んだよ、不感症よりはマシだろうが」
さすがに羞恥があるのか、銀時はわずかに頬を赤くしながら吐き捨てるように言う。
「そうだな。違ぇーねー」
その様子を可愛い…と思うのだから、我ながら末期状態だと土方は自覚する。
「ほら、こっちも弄ってやるから、機嫌直せ」
胸元の合わせを力任せに開き、露出させた乳首に指を這わす。
「……ばッ……んっ! …そこは触ん…な……」
逃げようと身じろぐ身体を押さえ込み、クッ…と指先に軽く力を入れて擦る。小さな突起はすぐに摘めるほどの硬さになった。
「知ってる。感じ過ぎんのが嫌なんだろ? スゲーな。ここ弄ってるだけでイケそうだな、おい」
クニュ…と摘み上げる度に、銀時の屹立からは新たな蜜が溢れ出る。
「……ッ、だからそこ……触んなって言って…んッ…」
身悶える白い肢体を見ているだけで、下肢に熱が溜まっていく。
(ヤベーな。徹底的に調べる余裕がねーかも)
弄っていた突起から指を離す。投げ出されていた白い足が目に入った。
その足首を掴んで、脚を大きく開かせると、
「わッ! いきなり突っ込むのは禁止だかんな!」
銀時が焦ったように叫んだ。
「色気の無ぇー……。安心しろ、いきなり突っ込んだりしねーよ。調べるだけだ」
太ももを抱え上げ、窄まりを覗き込む。
「うーっ、……んなの見て楽しいのかよ」
顔を精一杯背けながら、唸るように銀時が言う。
「ああ、楽しいぜ。こうやって、恥らってるお前を見んのも悪くねー」
「……悪趣味…んッ……」
銀時の反応を見ながら、眼前に露出させた小さな後孔に指を這わす。
「少し赤くなってんな」
そう呟いた途端、ドスンという衝撃が頭頂部を直撃した。
「痛ッ…てーな」
どうやら、かかとで蹴られたようだ。
抱え上げていた太ももを離した途端、銀時は起き上がってしまう。
「言っとくけど、赤くなってんのはお前がやったんだからな」
どうやら、夜鷹と言ったことで、調べると言ったことで、自分が疑われていると思ったらしい。
「怒んな。最初から…本気でお前が売春してるとは思っちゃいねーよ」
「……何だよ。だったら調べる必要なかったんじゃねーの?」
プク…と頬を膨らませて、銀時が抗議する。
「お前が食いてーっつた甘い物は、全部奢ってやる……」
今は、そんな顔にさえ煽られる。
「……だから今は……お前を全部食わせろ」
我慢出来ずに腕を掴んで引き寄せる。
「ちょッ? ……んッ…」
急に引き寄せられ、驚きの声を上げている銀時の唇を塞いだ。
息が上がるようなキスを何度も繰り返されて、身体から力が抜け落ちていく。苦くて嫌いなはずのタバコの味も、今はそれほど嫌じゃない。
仰向けに寝かされて帯を解かれる。着物の合わせがはだけた。
「……あのな、銀時……」
躊躇いがちに、何かを土方が言いかける。
見上げれば、土方は思い詰めたような顔をして、銀時を見つめていた。
「……なん…だ?」
更に言い難そうにしながら、
「……………愛してる、ぞ」
ありえないことを告げてきた。
(……今…なんて?)
銀時は自分の耳を疑った。土方の口から愛…という言葉が出てくること自体信じられない。
「……一度くれー、きちんと言っといた方がいいと思ってな」
けれど、わずかに顔を赤くした土方が、今のは空耳ではないと証明する。
「……んで、お前の返事は? 銀時」
答えを訊かれて。その瞬間、銀時の脈拍は一気に加速する。
「……う…ん……俺も……」
今更、何で告白大会? と思いながらも、内心でものすごく喜んでいる自分がいる。
だが、返事をしようとしても、愛…という言葉がどうしても出てこない。
土方の照れ臭さと緊張を、銀時は今更ながらに理解する。
「……なぁ、土方。……お前も俺の…だからな」
だから、愛してる…という言葉を返す代わりに、銀時も土方に対して、俺のもの発言で答えた。
「もう少し、足…広げろ」
「……ん」
のろのろと足を開くのを、待ちきれない…というように土方の身体が強引に入り込んでくる。
「……ちゃんと脱がせろって。借りもんなんだぞコレ」
着物は殆んど脱げてしまって、二人の下敷きになっている。今の状態では、グシャグシャになるだけでなく、人に見せられないシミまで付けてしまうだろう。
「着物の心配たぁ、……随分と余裕だな」
勃ち上がってしまっている性器に、指先を絡められる。
「もうビチャビチャになってんじゃねーか」
軽く扱かれただけで、濡れた音が響く。
自分の反応の早さを指摘されて、さすがに羞恥心が湧き上がる。
「昨夜より感じてんな」
からかうような言葉に、カッ…と頬が熱くなる。
「……うっ、んだ…よ。悪い…かよ」
「悪くねー。お前の反応見てるだけで、こっちももう限界だ」
身体のラインを辿るように撫でられて、腰を高く抱え上げられる。
「……だから着物っ!」
「……そんなもん…いくらでも後で弁償してやる」
太ももを舐め上げられる。きつく吸い上げられて、
「……ッ…ぁ……」
甘い声が洩れた。
「……だから今は…俺に集中しろ……」
強引にされても腹が立たない。
『……愛してる』
土方の告白が頭の中でリフレインする。
(……おかしい……)
今まで経験したことのない、熱に浮かされたような興奮に戸惑う。
「こっちまで…ひくついてんな」
濡れた軟らかい感触を窄まりに感じて、腰が跳ねる。
「……ひゃ、ぁっ……」
慣れない感触に、拒否したらいいのか、甘受したらいいのか分からなくて、惑っている隙を突くように、指が内部に入り込んできた。
「……っ……んっ……駄目…だ……」
軟らかい舌と、節くれ立った指で内壁を擦られて、思考が停止する。
「……ん、っふ…あぁ……」
指を抜き差しされる度に、クチュクチュと濡れた音が響く。
「指…増やしても平気そうだな」
ズルリ…と、増やされた指が抵抗なく入ってくる。
二本の指で内壁を擦られて、その指が前立腺を掠めた。指が往復する度に声が洩れ出る。
「……あ…うぁっ」
「すげー締め付けてくんぞ。二本じゃ足んねーか?」
さすがに、その問い掛けには、首を横に振る。
「……んっ……指、止め…ろ。も…っ、イキ…っそ」
「構わねー、このまま出せ」
ズッ…と一気に数本の指が入り込んできた。
内壁の一部を執拗に擦られて、熱い疼きが背筋を這い上がってくる。
「やめっ! ばっ……ッ」
ぐりッと、そこを強く押された瞬間、
「あっ…ああ!」
銀時は呆気なく逐精してしまった。
「……っ…指で…イかすなんて、手…抜き……だぞ」
荒い息のまま土方を非難する。
「悪ぃーな。お前があんまり可愛らしい反応するもんだから…よ」
止まらなかった…と。
「……っ……」
恥ずかしいことを、涼しい顔でさらり言われて、さすがに言葉を失う。
(……恥ずかしいヤツ……)
「……こんだけ解しとけば平気だな?」
指が引き抜かれて、すぐに熱い屹立が押し付けられた。
「……んっ、……ゆっくり…だぞ」
「分かってる。……力…抜いてろ」
指とは全く違う、灼熱の塊が入り込んでくる。
「……ぁっ、くっ……ッぅ」
何度経験しても、大きなものが体内に侵入してくる感覚は慣れない。
しがみつくものを求めて、銀時は自分を貫く男の背に腕を回した。
「はっ……あぁ」
ゆっくりと、けれど…深い場所まで入り込まれる。
「痛ぇーか?」
耳元で囁かれる。そのくすぐったさに。
「……大丈、夫…だ」
ズクン…と、戦慄にも似た疼きが腰の奥を直撃した。弾みで、内部を穿つ楔を締め付けてしまう。
触れられてもいない性器からも、トクンと先走りが零れ出すのを感じた。
達したばかりのはずなのに、すぐに達してしまいそうな予感に、少しだけ焦る。
「もっ、……いいから、動けよ」
そう言った途端……。
「ひっ、やッ!? っん……あ、ぁ」
予想外に、激しく動かれてうろたえる。
「……もっ…と、ゆっくり…って」
「悪ぃ…が、……余裕がねー……」
「な……っん、んっ……んぁ」
自分勝手な理由に抗議をしようとして、唇で唇を塞がれた。
そのまま激しく突き上げられる。散々弄られて敏感になっている内壁を容赦なく擦られる。
「……ふ…ぅん、っんぁ」
灼熱の楔が内壁のイイ部分を掠める度に、鼻から甘ったるい息が洩れ出る。
抜ける寸前まで楔を引き抜かれて、再び奥まで貫かれる。それを繰り返される。
その動きの激しさに、キスが解けた。
「んっ……あっ…あ、あッ…」
ゾクゾクとした感覚が腰の奥から込み上げて、銀時の中が収縮を繰り返す。
ひときわ深い場所を抉られて……。
「銀時…ッ…」
「あぁ……んんんッ」
最奥に熱い飛沫を叩きつけられたのを感じた瞬間、銀時もまた白蜜を放出した。
数日後。
夜のかぶき町。
勤務を終えた土方は、夕食をとる為に、馴染みの食堂へと向かう途中だった。
「かまっ娘倶楽部でぇーす。お願いします」
(……この声は?)
聞き覚えのある声に、土方は足を止めた。
……まさか? と思いつつも、声の聞こえる方向を見た。
視線が捉えたのは、女装して店のチラシを配っている銀時の姿だった。
驚いた弾みで、咥えていたタバコをポロリ…と落としてしまう。
「何やってんだァァ!」
「あっ……土方君」
「あっ、じゃねーッ! テメーはこんなとこで何やってんだァァ!」
土方は銀時からチラシを取り上げ、腕を掴んだ。
数日前。
『俺一人だとバケモノに対抗出来ねーから、お前も一緒に謝まれってくれよ』と、よく判らないことを銀時に促されて……。
オカマに囲まれる…という、思い出しても悪寒が走る状況に耐えながら、西郷という人物に会った。
「あん時のことは全部片付いたはずだぞ」
行き過ぎた暴力で、客を怒らせたという銀時。
だが、心配するほど西郷という人物は怒っていなかった。責任を取らす気もなったようで、銀時がオカマバーで働く必要はないという結論で、話は片付いたはずだった。
「……いや〜。そうなんだけどさぁ。……ここんとこ仕事が全然入んなくてねぇ。ほら、ウチには食べ盛りのが二人もいるもんだから……」
「そんで? テメーはオカマバーで働いている…と?」
「……まぁー平たく言えば、そういうことになるな」
しれっと答える銀時に、殺意にも似たものが湧き上がる。
それを察してか、銀時はじりじりと後ずさっていく。
「ふざけんじゃねーぞ! 万事屋ァァッ!」
怒鳴ったときには、銀時はすでに腕を振り解き、かなり離れた場所まで逃げていた。
(……どんだけ逃げ足が素早ぇーんだ)
思わず感心してしまうが、
「土方君さー、そんなに怒鳴ってると高血圧になっちゃうよ。それにね、こっちも生活が掛かってんの! 愛だけじゃお腹は膨れないんだよ」
(愛だけじゃ腹は膨れねーだと?)
聞き捨てならない一言に、土方は銀時を追い掛けて掴まえることを決意する。
(……裏を返せば、愛はあるってことか)
だらしなくて、いい加減で。だが、正義感が強くて、誰よりも綺麗で・・・。
掴まえた…と思ったら、スルリ…と腕から逃げてしまう銀時。
同情心に縋るだけでは、銀時は手に入らない。恋情でもそれは同じということだ。
「上等だ。今度こそ絶対に掴まえてやる」
簡単に手に入らないからこそ、追いたくなるのかもしれない。
一生…銀時を追い続けるかもしれない予感に、それも悪くない…と、土方は笑みを漏らした。