土銀
□青いんです
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〜〜現在
居酒屋のカウンター席。
店内の客の殆んどが中年のサラリーマンばかりの小さな居酒屋にて、銀時はイライラしながら、待ち合わせをした相手を待っていた。
(あの野郎。どんだけ待たせやがんだ)
就業時刻を終え、さっさと帰宅していた銀八は、同僚である坂本辰馬から「話がある」と呼び出された。
シャワーを浴び、すでにビールまで飲んでいた銀八は、外に出るのが面倒で「明日、学校で聞くわ」と返したが、坂本は、個人的な話だから学校の外で話したい、と珍しく食い下がってきた。
坂本の個人的な話など、どうせ女にフラれた…とかいう、どうでもいい話なのは、過去の経験から想像がついている。
しかし同時に、食い下がる坂本がしつこいことも知っていた。
だったら…と、坂本に自宅まで来てもらうことを考えたが、部屋の中には土方の持ち物がところ狭しと置かれていることに気付き、
「お前の奢りだからな」という条件で、呼び出しに応じたのだ。
しかし、呼び出した当の坂本がまだ来ていない。
これ以上待ってやる義理はない…と、帰ろうとした銀八だったが、すでに熱燗と焼き鳥数本を注文した後だったことから、仕方なく、坂本が訪れるのを待っていた。
「待たせてしもうて、すまんかったのう。金時」
「金時じゃねーよ! ったく、お前から呼び出しといて遅れてんじゃねーぞ」
すまん、すまん、とニヤけた顔で謝りながら近寄ってきた坂本の頭を、ガンッ、と、とりあえず一発殴っておく。
「ははは! 相変わらずじゃのう、金時は」
殴られた坂本は、頭部を擦りながらも、笑いながら、銀八が座っている隣の席に腰を下ろした。
「きんときじゃねーって言ってだろうが!次に金時って言ったら、その口、針と糸で縫い付けるぞ」
脅しではなく、殆んど本気で言っている。
「で、このクソ忙しいのに、こんなとこまで呼び出して何の用だ? 女にフラれたとかいう下らねぇ愚痴だったらメニューに載ってるもん全部お前の奢りで注文してやるからな」
当然、これも本気である。
「ああ、そのことなんじゃが…。どうしようか迷ったんだがのう、一応、おんしの耳にも入れといた方がエエ思うてな」
「……?」
坂本の、いつものふざけた態度ではなく真剣な態度に、銀時はホンの少し、嫌な予感を憶えた。